アーバンモンスターズ ~都市部で釣れる巨大魚たち~
アーバンモンスターズ ~都市部で釣れる巨大魚たち~
大きな魚を釣りたい。
それは多くの釣り人が抱く願い。
その夢をかなえるために彼らは離島へ、外洋へ、あるいは海外の大河へと足を伸ばすわけだが、実は都心部・市街地で気軽に出会える大型魚も多数存在する。
ここではそんな“アーバンモンスター”たちを紹介したい。
東京~首都圏
日本を代表する大都市・東京都その近郊には江戸川・利根川水系の大河が流れており、その先には沿岸性魚類から深海魚まで、様々な魚種が生息する東京湾が広がっている。都市部から排水として流れ出す栄養塩は、時として大魚を育む要因となる。
江戸川・利根川水系で多く見られる、中国原産の大型魚ハクレン(Hypophthalmichthys molitrix)。成長すると1mを超えるが、主食は植物プランクトン。釣る場合はマッシュポテトなど植物性のエサを用いる。
ソウギョ(Ctenopharyngodon idellus)。こちらも巨体に似合わずベジタリアンで、葦の葉をエサにして狙う釣法が有名。中国原産。
在来種にも素晴らしい魚は多い。春に多摩川へ一斉遡上するマルタ(Tribolodon brandti)は立派な魚体だけでなく婚姻色の美しさも魅力。(写真提供:沖山朝俊)
舞台を海、東京湾に移せばそれこそ巨大魚がよりどりみどり。
東京湾の大型魚といえばアカエイ(Dasyatis akajei)!…だが、ほかの魚を狙っている際に仕掛けを引きちぎっていくので、釣り人には嫌われがち。尻尾の毒針に注意。
沿岸部にはドチザメ(Triakis scyllium)も高密度で生息している。十数キロに達する大型個体も多く、近年は新たなゲームフィッシュとして注目を集め始めている。
東京湾の巨大魚といえば、「アナコンダ」の異名を持つダイナンアナゴ(Conger erebennus)も忘れてはいけない。
身の丈に迫る巨体は、アナゴという魚に対するイメージを塗り替えるほど。
また、東京湾と言えば海底に切り立つ「東京海底谷」に潜む深海魚も忘れてはならない。これは夏の風物詩であるシマガツオ(Brama japonica)。エチオピアとかオッペタンコというニックネームでも知られる。
海底谷は深海鮫の宝庫でもある。特にツノザメの類は頻繁に釣れる。
大阪・神戸・京都
近畿地方を代表する都市、大阪・神戸・京都にも大型魚が分布している。
大阪湾もまた、淀川水系から栄養素の豊富な水が注ぎこむ都市型の豊かな海。
大阪湾で近年増加しているのがこのナルトビエイ(Aetobatus narutobiei)。二色の浜などではアサリの食害も報告されており、問題になっている。
神戸の港や堤防にはコブダイ(Semicossyphus reticulatus)が多く生息。
京都を流れる琵琶湖水系の河川には日本最大の純淡水魚・ビワコオオナマズが生息している。
琵琶湖水系固有種の貫禄。日本が世界に誇る大魚である。(写真提供:沖山朝俊)
沖縄・那覇
沖縄本島南部に位置する那覇市は、日本で唯一亜熱帯気候に属する大都市。この街を流れる河川には、本土とひと味違うモンスターたちが出没する。
夜の繁華街。こんな町中の川にも…。
汽水域~淡水域へ遡上することで知られるオオメジロザメ(Carcharhinus leucas)。全長3mを超える大型のサメで、人食いとしても知られる。ただし、沖縄本島の川に現れるのは1m前後までの小型個体が多い。
世界中の釣り人たちの憧れ、GT(Giant Trevally)ことロウニンアジ(Caranx ignobilis)までドブ川に!
沖縄と言えばオオウナギ(Anguilla marmorata)の存在も忘れてはいけない。最大で全長2m、体重20kgに達するとも。
激しいダッシュとジャンプを繰り返すイセゴイ(Megalops cyprinoides)も都市河川~港湾の釣りものとして人気。最大で1mに達し、パシフィックターポンの名で呼ばれることも。
番外:海外編
なお、都市部で大魚が釣れるのは日本だけに限った話ではない。
最後に番外編として香港とロンドンで見られる二種のモンスターを紹介する。
人口が密集する香港。この街を流れる川は汚染が深刻で、とても大型魚が棲めるようには思えないのだが…。
大きなアフリカ原産のナマズ、クラリアス(Clarias sp.)がしたたかに生息している。
もともと食用で持ち込まれたものが野生化したのだろう。空気呼吸を行えるため、水質汚濁にも強い。
ロンドンの街中を流れる運河。
ここにはヨーロッパを代表する大型のフィッシュイーター、ノーザンパイク(Esox lucius)が生息。
現地では知る人ぞ知るフィッシングターゲットになっているようだ。(写真提供:ショータ・ジェンキンス)