プレコ、ピラニア、果てはワニまで! アマゾン奥地で熱帯魚採集 (南米・ガイアナ共和国)
プレコ、ピラニア、果てはワニまで! アマゾン奥地で熱帯魚採集 (南米・ガイアナ共和国)
魚を捕りにガイアナ共和国の奥地、いわゆる北部アマゾン地帯へ行ってきた。
ターゲットはピラルクやピライーバ、ジャウーなどの巨大魚たち。…だけではない。
水槽で飼育できるような小型魚や、手のひらに乗るようなカエル、カメ、虫たちだって捕まえたい。アマゾンの誇る生物多様性は、彼らの存在にこそ色濃く反映されるのだから。
熱帯雨林の奥地では雑魚雑虫ですら、出会う全ての生物たちが新鮮な存在だった。
アマゾンはナマズの宝庫
付着性の水生植物が繁茂する岩礁地帯はロリカリア科、特にプレコと通称されるナマズ類の楽園だった。
星空のような白い斑点が美しいプレコ。
夜に岩の割れ目を覗くとたくさん見つかるのだが、すばしっこいので捕獲するのは簡単ではない。
大きな眼が可愛らしい小さなプレコ。幼魚だと思われるが、果たして成長するとどんな姿になるのか。
こちらは頭でっかち。プレコ類は種数が多く、様々な体型、体色のものが見られる。
観賞魚業界では「スーパーオレンジフィンレオパードトリムプレコ」のインボイスネームで流通する美しいプレコ。流れのある浅瀬にベタベタと張り付いている。
幼魚でも一匹数万円で取引されることもある高級観賞魚。これほど立派な個体なら、一体どんな値がつくのやら…。
体表には無数の棘が並ぶ。素手でつかむと結構痛い。
鰓蓋にはブラシ状の突起。外敵に追われると岩や流木の隙間に逃げ込み、こうした突起をひっかけてストッパーにするのだろう。
瞳はU字型。暗所では円く拡がる。
砂地でよく見かけるロリカリアの一種。
細長い身体に大きく伸長した鰭。かなり特徴的な体型だ。
こちらもロリカリアの仲間。コチのように扁平な魚体。
夜行性らしく、夜に砂浜の波打ち際を照らすと見つかる。砂ごと掬い上げて捕まえる。
プレコ、ロリカリア以外にも小型ナマズ類は豊富。やはりプレコ同様に硬い鱗に覆われたガードが固いものが多い。それだけピラニアなど牙の鋭い捕食者が多いということだろう。カリクティス、いわゆるヨロイナマズの一種(Callicthys sp.)。見た目と違って美味しい魚らしい。
ストライプドトーキングキャットフィッシュ、あるいはホワイトライントーキングキャットフィッシュ(Platydoras costatus)と呼ばれるナマズ。日本でも観賞魚としてまあまあポピュラー。
トーキングキャットフィッシュという名のとおり、捕まえるとグゥグゥと鳴き声を上げる。
硬く、長い棘の通った胸鰭を持つ。これで流木の隙間に踏ん張って敵をやり過ごすのだろう。また、相当大型の捕食者でなければ喉につっかえて飲み込めないに違いない。
アジのゼイゴのような尖った硬い鱗まで体側に並ぶ。
長いヒゲを持つピメロドゥスの一種。泣きそうな顔が水中における彼の地位を物語っている。
第二の勢力、カラシン類
アマゾンの河川で豊富なのはナマズだけではない。
日本をはじめアジアでは馴染みの無い分類群だが、ピラニアやネオンテトラの仲間、いわゆるカラシン科の魚も極めてバリエーション豊かである。
蝶が飛び交いオオオニバスが浮く川をタモ網と釣り竿を持って探索していく。
まずはカラシンの代表格であるピラニア。このくらいの手のひらサイズでも扱いはおっかなびっくりなのですが…。
特に大きく成長するブラックピラニアはこの迫力。指でも咬まれたらと思うと…。
ブラックピラニアの歯。その鋭さはもちろん、顎の強さも恐ろしい。
こちらはパクーという魚。いわば雑食のピラニア。水面に落下した木の実をバリバリ噛み砕くため、臼歯状の歯が発達している。
パクーはおいしい魚なので、漁師も好んで捕らえる。釣りで狙う場合は川辺の石の下にいるこのカニが特効餌になるのだとか。
カニが手に入らない場合は砂地にたくさん転がっているカワニナに似た巻貝を潰して使う。これも手元に無い場合はマンゴーなどの果実を用いるそうだ。
珍種・レッドパクー。現地では最高級魚として好んで漁獲される。釣りの他に弓矢を用いての伝統的漁法も盛んだ。
小型のパクー。「メチニス」の名で観賞魚としても流通。
岸際を網でさらうと、水槽で飼いたくなるような小型種が多数採れる。
身体は小さくとも、大きく開いた口は捕食者のそれ。
異様に大きな眼をした小型種。
尖った吻を持つソードフィッシュ(Boulengerella cuvieri)と呼ばれるカラシンの幼魚。アマゾンの他地域ではビクーダとも。
ソードフィッシュは大きくなると1mを超える。この個体でもまだまだ中学生サイズ。
レポリヌス・ニグロタエニアトゥス(Leporinus nigrotaeniatus)
その他の魚たち
夜の岩礁地帯、入り組んだ大岩の隙間にできた小さな淵に何かの稚魚が溜まっている。
掬い上げてみると、ピーコックバスの稚魚たちだった。
その付近で釣れたピーコックバスの成魚。この過酷な川では、あのたくさんの稚魚たちのうち一体どれだけの個体がここまで成長できるのだろうか。
ルアーで釣れたピーコックバスの成魚。陽の下で見るとこんなに美しい。
砂浜には淡水カレイも。
グラスナイフフィッシュ
シルバーアロワナもたくさん釣れる。野生個体の美しさは格別。
砂地には淡水エイも!毒針を持つ種が多いので、現地の人々からはデンキウナギと並んで恐れられている。
砂地に溶け込む体色で擬態はバッチリ。さらに砂に潜られると、発見するのは至難。
この種は尾に毒針を持たないため、安心してハンドリングできる。
淀みや水たまりにはタウナギも生息している。日本や東南アジアで見られるものによく似ているが、より大型で顔つきが少々異なる。
魚だけじゃない!
もちろん、虫や爬虫両生類にも多数遭遇する。
キャンプの明かりに飛んできた大きなカブトムシの雌。もしやヘラクレス!?
度々遭遇する巨大なバッタ。
石のような質感の胸部がかっこいい。東映はこのバッタを新しい仮面ライダーのモチーフにしてはどうか。
つま先や関節がオレンジに染まるのもニクい。
「このバッタは蝶に変身するぞ」とは現地人の談。どういう意味か分からなかったが、翅を広げてみて納得。
川辺で見かけた虎柄の大ムカデ。
セミの抜け殻は日本とほぼ同じ。なんだかほっとする。
毛深い身体とグラデーションのかかった翅脈が特徴的。
夜になるとツリーフロッグの鳴き声もたくさん聴こえるのだが、姿はなかなか見られない。
華奢な脚を持つヒキガエルの一種。
腹面に散る白いスポットが可愛らしい。
なぜか砂まみれになっていた小型のヒキガエル。
オオヨコクビガメも登場。
嘴が厚い。日本で見られるカメとは大きくかけ離れた顔立ち。
メガネカイマンの幼体も捕れた。素手で。真似しないように。
子どもであっても顎の力は凄まじく強い。また、子どもだからこそ歯が細く鋭い。不用意に触れないようにしよう。
なんとココノオビアルマジロ(Dasypus novemcinctus)まで川面を流れてきた!…アマゾンの懐はどこまでも深い。