ワニ釣りができる公園を見つけた (ベトナム・ホーチミン市 スイティエン公園)
ワニ釣りができる公園を見つけた (ベトナム・ホーチミン市 スイティエン公園)
ベトナムの経済都市、ホーチミン市。
世界中からバックパッカーが集まるゲストハウスで、旅人たちがそれぞれの道程について語り合う。
知らない世界の話が飛び交っても、言葉の壁なんて誰も気にしない。
誰にも教えたくないような穴場についても、ここではつい口が緩む。各国の最新情報を把握する格好の機会だ。
「異空間の様な場所がある。まるで『クレヨンしんちゃん』の映画の中の世界だったよ。そしてワニも釣れるんだ。」
宴の席で、そんな気になる情報が舞い込んできた。
異空間で…?ワニを…?
…うん。よくわからないが、釣りたい。
一人旅にスケジュールなんてものはない。気になった瞬間から行動を開始する。その晩のうちに荷物を詰め込んで、翌朝にはゲストハウスを発った。
ホーチミンの中心部、ベンタイン市場前のロータリー。
聞いた話では、19と書いてあるバスに乗れば例の場所にたどり着くらしい。
情報をくれた旅人によれば「アナウンスなんて親切なものはないから、窓の外をよく見ておくこと。近づけばきっと分かるよ。」とのこと。
…曖昧だなあ。
バスに乗り込んだら、売り子のおばちゃんからチケットを5000ドンで購入。当時、日本円で30円しなかった記憶がある。チケットを買うと、冷たいミネラルウォーターをくれた。
バスに乗り込んでからは、しばらく車窓とにらめっこが続く。HONDA率が高い。
バスに乗ってから、どれくらい経っただろう。最初は客も数人いたが、今やこのバスに乗っているのは自分一人。もう一時間以上乗っている気がするんだが…。不安になってきた。
そんな中、車窓に何か巨大なモノが映った。
明らかに異様な景色が、僕の遠近感をぶち壊しに来る。頭がパニックを起こしそうになる。
明らかに人工的な岩山がそびえている。よく見ると人面のようにも…。
ものすごくデカイおっさんの顔だった。何だこの施設は…。
エントランスの階段には色鮮やかな龍。階段に座り込む子供たちと比較するとわかりやすいが、やはりこれも巨大。すべてが巨大。
園内に入っても、装飾がいちいち大きい。人が小人のようだ。
入り口付近にこそ、まばらにだが人はいた。しかし奥に進むにつれ人影がどんどん減る。
それでも相変わらず巨大な像たちは無数にら並んでいるのだから、いよいよ異空間っぽさが増してくる。
子供ながらにここに迷い込んだら、トラウマを抱えてしまいそうだ。「アニメ映画の中の世界だった」というのもわかる気がする。
いざワニ釣りへ
そんな異空間を通り過ぎた先に、目当てのワニ釣り園はあった。
入り口の前にはチケット売り場がある。どうやら、ワニ釣りは別料金のようだ。
まず入場料が10000ドン。日本円にして50円くらいか。
しかし、ここから財布の中身を少しずつ少しずつ削られていくことになる。
ワニの置物が目印。
入場して水辺に駆け寄ると、そこには想像を絶する数のワニがいた。
ああ、間違いなくこの公園には人よりワニの方が多いわ…。
水際をすべて覆い尽くすワニ。厳重に燕返しの金網が張り巡らされている。
大型個体は、もはや恐竜。目の前まで近づけるので、凄まじい迫力を味わえる。
さっそく、係りのおじさんから釣り竿を借りる。
ここでさらにレンタル料を支払わなければならない。エサ付きの釣り竿1本につき3000ドン(現在のレートで15円程度)である。
さあ、いよいよワニ釣り開始だ。
レンタル竿のチケット。勝手がわからないので、最初は二枚購入してみた。
チケットと交換した仕掛けは、物干し竿のような竹竿に、スパゲティより太い糸。その先にはエサが結んである。針はついてない。
エサは新鮮なニワトリのキモ。おじさんが一つ一つ結んでくれる。
すると、おじさん後ろから子供が飛び出してきた。顔がよく似ている…。どうやら彼の息子らしい。
釣り竿を持ってついてこい!と身振り手振りで伝えてくる。二十歳も過ぎて、遊園地の釣り堀で一人きりというのもなんだかなぁ…と薄々感じ始めていたので、なんともありがたい。
どうやら彼がワニ釣りを教えてくれるようだ。せっかくなら大きいワニを探そう!
…と言うか言わないかのうちに、口をあんぐり開けてエサを待つ巨大なワニが視界に入った。
…手間が省けたよ。
釣り竿を持った途端に、お腹をすかせたワニたちが大きな口を開けて集まってくる。
ひときわ大きなワニの口元にエサを投げ込む。
躊躇なく食いついた。
バコン!という音ととも水柱が立った。餌は釣り糸から外れ、ワニの大きな口にのみ込まれていった。
もちろん針はついていないので、ワニを傷つけることはない。
正確に言えば釣りではなく、釣りを模した餌やり体験である。それでも大きなワニが、自分のあやつる肉に襲いかかってくる時は興奮モノ。
ワニたちは時にカエルのようにジャンプしながら、宙づりにしたエサにまで食いついてくる。
気づくとおじさんの息子と一緒に夢中になってしまい、次々と仕掛けを買いなおすことになってしまった。
ワニに餌を取られ、仕掛けを買いなおし、また取られる。この繰り返しを半日も続けたが、それでも飽きることはなかった。
大迫力!
誰でも安全にワニの迫力を楽しめるので、異空間のような遊園地も含め、ちょっと変わった観光地へ行きたい方にはぜひオススメしたい場所である。
この不思議なワニ釣り園があるのは、ホーチミン郊外にある巨大遊園地 スイティエン公園(Suoi Tien Theme Park)。
当時は本当に寂しい感じの場所であったが、最近では世界奇怪遺産という写真集の表紙にも選ばれ、知名度はぐんと上がった。
今はもっと賑わっているのかな。
入園料:大人60000ドン/子供30000ドン
ワニ釣り園:10000ドン
エサ付釣り竿:3000ドン 住所:120 xa lộ hà nội, tân phú, hồ chí minh, việt nam