ブラジル・サンパウロ 大都会の汚水に暮らすカピバラたち
ブラジル・サンパウロ 大都会の汚水に暮らすカピバラたち
南米最大の都市、サンパウロ。
ブラジル南東部に位置するこの大都市の抱える人口は千万人を超え、中心部には各国の大企業のオフィスをはじめとする近代的な高層ビル群が立ち並ぶ。
まさに南アメリカの経済、流通の要と呼ぶにふさわしい華やかな街であるが、その反面で環境汚染や公害問題も深刻である。
特に、市内を流れるチエテ川とピニェイロス川の汚濁ぶりときたら、目を背けずには、そして鼻をつままずにはいられない有様だ。
南米最大にして南半球最大の大都市、サンパウロの街並み。
急速な経済成長の裏で割を食ったのは河川とそこに暮らす生物たちだった。市内を流れる川には油膜とゴミが浮かび、悪臭を放っている。
黒く濁った水には大量のゴミが浮き、硫黄のような悪臭が立ち込めている。
現代の日本では考えられないほど劣悪な環境で、およそ野生動物が生息しているとは思えない景観であるが、こんな水辺に「あの獣」はたくましく暮らしているのだ。
高層ビルの陰にカピバラの一家が
世界最大のげっ歯類、カピバラである。
わりと人慣れしており、ある程度の距離までは接近しても逃げない。
カピバラといえばパンタナールやアマゾンの湿地帯に暮らす動物というイメージが強いが、水と草さえあればこのサンパウロの汚れた水辺でも生き延びることができるのだ。
もちろん、彼らにしてみれば快適とはいいがたい環境なのだろうが…。
大型のトカゲ、テグーの姿も。肉食性らしいが、こんなドブで何を食べて暮らしているのだろうか。
悠々と道路を横切るカピバラ。彼方に見えるオフィス街が実にミスマッチ。
彼らはこの土地が開発される以前から何代にもわたって棲み続けている先住者なのか、あるいは人口の流入に伴って連れ込まれ、遺棄された者なのかはわからない。
だがいずれにせよ、この「超巨大なドブネズミ」たちの姿には何かを訴えかけられるものがある。
幸い、近年はサンパウロ市民の環境に対する意識も高まってきており、少しずつではあるが河川の水質も改善しつつあるという。
いずれはカピバラのみならず、美しい熱帯魚や水鳥たちも帰ってくることだろう。
いつか、サンパウロでも野生動物観察やスポーツフィッシングといったエコツーリズムを楽しめる日が来ること願いたい。