自分より大きな深海魚「バラムツ」を釣って食べた♪(和歌山県・白浜沖)
自分より大きな深海魚「バラムツ」を釣って食べた♪(和歌山県・白浜沖)
「自分よりも大きな魚を!」そんな野望を抱き、私の戦いは始まった。
相手は夢の怪力モンスター「バラムツ(Ruvettus pretiosus)」、深海魚である。
体内の油脂成分のほとんどが、人体で消化が難しいとされるワックスエステルで出来ていて、3切れ以上食べると、アナルから油が出て大変な事になるんだと釣り仲間から噂は聞いていた。
2015年2月14日。世の中の女子は、バレンタインデーに浮かれ、好きな男性に会いに行くというのに、私はバラムツに会いに和歌山県へ行った。
女子だってハメたい!!
白浜沖から出船の「代々丸」。バラムツ釣りで有名な船だ。
バラムツは、夜になるとエサを求めて浮いてくる(といっても、水深150メートル位)ので、夜釣りが基本となる。
仕掛けは、300gのジグに凶器的なフック、さらにサバの切り身をつけるというジギングの様な餌釣りの様な斬新な釣りである。
持ちがいい頭の部分を使うか、より美味しそうな臭いがする身の部分をつけるか悩ましいが、水深150メートルに落とすのだから、エサの確認だけでも体力を使うので、頭の部分を使う事に。
仕掛けだけで、すでに重みが…
ドキドキしながら、底に落とす。隣の人を横目でチラチラと観察しながら誘いを真似してみる。すると、コンコンと反応が!!
「も、もしやキタ!?」
深い世界で感じる生命。巻いてみると、簡単に巻ける。聞いていたファイトの大変さとは全然違った。魚も違った。
鋭い牙を持ち、子憎たらしい顔で上がってきたのは、クロシビカマスだった。
この鋭い歯のおかげで、<今後スパスパ切られて泣くハメになる…
とりあえず、これで坊主は免れたのだ。
エサ持ちを良くする為に、頭と身のW付けも試みた。
腰にはいつでもファイト出来るようにファイティングベルトを装着。
再び、深い世界へ落とす。
するとまたもや、コンコンと生命反応が。釣れてるのが分かる。釣れてしまってる。クロシビカマスが。今度は巻き上げずに彼を生きエサに見立てて誘いを続ける事に。
すると、ズンッ!!!と、想像以上の重みがきた。
すごいパワーで1巻き目がいきなり辛い。ンガァ~!!と思っていたら、突然嘘みたいに軽くなりバレてしまった。
バレんたいんデーだったからか、見事にフられて終了。
2度目の挑戦。2015年5月。
釣れる気マンマンで、バラムツに合わせ、薔薇柄の服を着て仕込んだにも関わらずクロシビカマスしか釣れず終了。
3度目の挑戦。2016年2月。
やはり坊主で、海鮮丼食べた写真しか残らず。
4度目の挑戦。2016年3月。
出船するも、すごいシケにより引き返す事に。
呪われてる気がしてきた…。
5度目の挑戦。2016年9月。
小さい魚(タイリクバラタナゴ)と大きい魚(バラムツ)のギャップを味わいたく、同じ日に挑戦。
バラムツ釣りとは正反対の小さな仕掛け。
場所を大きく移動し、その夜、再びバラムツを狙いに白浜へ。
バラタナゴからのバラムツでバラ色の1日で終らせる予定が、やはり釣れず(泣)。
6度目の挑戦。2016年11月。
今度こそ、今度こそは決めたい!
だが、いつもと同じ事をしていてはいけない。
何か変えなくては。誘うジグだが、どうやら夜行タイプがいいらしい。
「トモチン」と自分の名前を蓄光顔料でカスタムしてみた。
仕掛け的にもバッチリ♪結果、トモチンに釣られるバラムツはいなかった。
7度目の挑戦。2016年12月。
釣りの新聞の取材で参戦。
「絶対釣って、表紙飾るでぇ~。」と気合いは十分。
ところが、クロシビカマスにより3本もジグはロスト。
高切れしたので、自前ベイトタックルから、スピニングタックルをレンタルする事に。
すると、ズンっ!!と強烈な重みが!!
もしかして来たんじゃないの?と喜ぶ間を与えない程のパワーが全身に来た。
リールを巻けない。ハンドルを一回転させるのがやっと。これはやばすぎる。
人生で最もパワーを出した。
ファイトする事20分、苦しすぎて竿を海に投げちゃいたくなってきた。
すると船長さんが、「それ、バラムツちゃうな~。イシナギやねぇ~。」
「えっ!?」
イシナギはイシナギで釣りたいが、モタモタしてる間に底に潜られた!!
うそぉ~ん!!
疲れとショックの顔。
気を取り直し、再びチャレンジ。するとまたしても、ズンッ!
でも、悲しきかな苦しむ前にバレた。
結果、この日も釣れずに終わったのだが怪力とのファイトを味わい、私の中で大きく何かが変わった。
8度目の挑戦。2016年12月。
バラムツ狙いに行くペースが上がってきてる。苦笑。
期待と気合いと緊張の3Kを胸に出船。
今回は、準備の段階から今までの私とは思いが違う。ラインシステムだっていつも以上に気持ちを込めて完璧に組んだ。
前回のイメージを大切にし、今度こそはと真夜中の深海へ挑む。
1投目、水深150メートルの底をとり、ワンピッチで3メートルからの数秒ステイ。ゆっくり竿を上げて下げると、トントン、と反応が。いつものクロシビカマスかと思いきや、再びしゃくるとただ事でない重みが手元へ伝わる。
「キター!!」
めっちゃ重くて辛いが、イシナギに比べると何だかいけそうな予感。
ひぃ~ひぃ~フー!!
やり取りを楽しむ余裕は全く無い。腰にも来る。
格闘すること約25分。大きな物体が水面に!!
見た事のない水面での存在感。
タモを入れてもらい無事捕獲。長い長い道のりだった分、思わず叫んじゃうし泣ける。
しかし、でかい!
トパーズ(黄色い宝石)のような目に、太い唇、名前の如くバラのトゲを思わすザラザラのボディーが印象的。
ジタバタと激しく駄々をこねるかの様な暴れっぷり。
計測すると、166センチ。夢の、バラムツ身長越え!! 私がチビっ子(153.8センチ)でよかった。
念願のバラムツと、一緒に写真を撮る事が出来た。
そしてここからは、長い呪縛が解けたのか、奇跡は再び。
なんと2匹目がヒット。しかもさらにパワフルである。
竿がグンっと入り込む。
汗だくになりながら巻き上げてきたかと思いきや、残り30メートルで走られ、再びラインが出るという洗礼を受ける事6回。
パワーに耐えきれず、座って巻き上げる事に。
30分程もがきながら、164センチのバラムツをゲット。
凶暴すぎて、支えてもらわないと膝に乗せれない。
やりきった感満載だったのに、まさかの3匹目までゲット。
ちょい小ぶりサイズ。
何度も何度も通い、坊主をくらいまくっていたのは何だったのか!?
だから釣りはやめられない。
しかし一晩で、3匹のバラムツとファイトしちゃう自分の体力に自画自賛した。
大満足で、帰り、ウドンを食べに寄ったのだが、腕がパンパンすぎて、箸でうまく麵を口に運びにくく、二人羽織で食べてるかのようになりかけた。
もちろん、これで私のバラムツは終わりではない。更なるサイズアップを目指し、私は通うのだ!
惚れた弱みやねっ。
おまけ
バラムツを食べたい!市場で流通していない魚を食べれるのも釣り人の特権だろう。
ただし、自己責任であり、量に大注意である。
見るからに脂がすごいっ。
バラムツの場合、脂というよりも油だ。
英名で、「オイルフィッシュ」と言うだけの事はある。
サクも真っ白で油の塊感が。
まずは、刺身で。
艶やか。
一切れ、刺身醤油に漬けるだけで、一瞬にして油が浮く。
もはや焼肉のタレのようだ。
恐る恐るパクリっ。
大トロを思わすかのような油と旨味が同時に口の中で溶ける感じがウマいっ!
でも、美味しさと共に次の日の不安も襲って来る…。
3切れ以上は危険ならば、フライパンで焼いてみよう。
フライパンに、もちろん油はひかない。
ジューシーなお肉を焼く時のような、ジュー、ジューという音。みるみる流れ出す油。濃縮された旨味が詰まった匂いが立ちこめた。
視覚、聴覚、嗅覚が支配されそうに。
油が流れていくと、身が薄くなっていき、最後は表面がカリカリに焼け上がる。
豚トロを焼いてると錯覚しそうに。
焼き終ると、溜まる油。
焼いた事で、美味しさは勿論、安心感か量がススム。
ハッ!!3切れ以上食べてはいけなかったんだ…。
一応、嫁入り前の乙女なので、結末は書かずにこのへんで終わっとこう……。