メコン川沿いの市場探訪(ラオス / ビエンチャン)
メコン川沿いの市場探訪(ラオス / ビエンチャン)
ラオス人民民主共和国、通称ラオスは中国・ベトナム・カンボジア・タイランド・ミャンマーに挟まれた、海を持たない内陸国。
国際河川のメコン川とそれに流れ込む多くの支流が、首都のビエンチャンをはじめ数多くの地方都市を発展させてきた。
メコンといえばまだまだ多くの謎を孕んだ東南アジアを代表する大河。
2013年夏、未知の魚に興味が湧いた僕はメコン川に隣接するタイランドのノーンカーイという町に長期滞在していた。
対岸に見えるのはラオスの首都ビエンチャン。その朝市には、珍しい魚がたくさん並ぶという。
タイランドのノーンカーイから見る夕日。メコン川の先に見えるのはラオスの首都、ビエンチャン。
国境バスに乗ってラオスに入国。宿が見つかったら、荷物を置いて情報を集める。フロントマンに市場までの地図を書いてもらい、翌朝に備えた。
早起きして、ビエンチャンの朝市(タラート・サオ)へ向かう。
朝市は生のエネルギーが渦巻いていて大好きだ。五感全てが興味を刺激してくる。
野菜が美味しいと評判の国だけあって、どれも新鮮で美味しそうな色をした野菜が並ぶ。日本の八百屋と決定的に違うのは、香草が放つ強烈で爽やかな匂い。
唐辛子が山積みに。日本ではあまり見かけないが、トウガラシをはじめとした辛い果実や香辛料は、海外ではよく見る光景。
これもアジアの市場ではよく見かけるランブータン(Rambutan)。慣れないとうまく食べるのが難しいが、実は缶詰になったものが食べやすくて個人的にオススメ。
山盛りになっていたのは、ヘビとバッタ。日本でいうイナゴに近いバッタ類。どちらも重要なタンパク源なのであろう。
せっかくなので買ってみた。おばちゃんが素手でドサッと袋に詰め、醤油を入れた霧吹きで、シュシュッと味付けして渡された。佃煮とか揚げになっていれば食べる気にもなるのだが、実際は軽く湯通ししたような半生状態。足もそのままで食べ方すら分からなかった。
食用のカエルがタライいっぱいに。日本で言う食用ガエルのウシガエルとは違った種類。
おびただし数の鳥足。なんとも言えない景色だが、ここで焼いてもらった焼き鳥は大変に美味しかった。
生きた状態でも売られている。このまま買って帰るも良し、店員に頼んで締めてもらうも良し。かわいそうな気もするが、文化の違いとして眺めるしかない。
豚の頭や内臓が飛び交う生肉ゾーンは、肉片が飛んできそうで安心して歩けない。
ついに魚屋が並ぶ一角を見つけた。タライに水を張り、活魚を泳がせている。一つ一つタライの中を覗いていくワクワク感は、玉手箱を開けるようなそんな気分。大きい魚は台の上にドンと陣取っていた。
クリプトプテルス・アポゴン(Kryptopterus apogon)
Hemibagrus sp.
1mをゆうに超える謎の大ナマズ。
ワラゴ・アッツー(Wallago attu)この魚を探していた。ラオスにもいるのではないかという憶測が現実のものとして目の前に現れ感無量。前日、たまたま通りかかったラオス観光局で手に入れた地図を使い、ジェスチャーを交えながらなんとか産地河川を聞き出すことができた。
バガリウス・バガリウス(Bagarius bagarius)この魚も産地を知りたかったので、見つけた時は興奮した。メコン川の支流、そしてこの魚を取った漁師の家まで教えてもらうことができた。身軽さを優先し、釣り道具などは持ってきて無かったが、「今行かなければいつ行く?」と自問自答し、数日後にはバスに乗り込んでその土地に向かうことになる。
サルウィンナイフと呼ばれるナイフフィッシュ
ロイヤルナイフ(Chitala blanci.)
メコン水系はコイ科の魚も豊富。
Labeo sp.
クラリアスやスネークヘッドの類。肺呼吸ができるので、タライの中でも弱ることなく、生きたまま売られている。どちらも東南アジアには欠かせない美味しい食用魚だ。
Pristolepis fasciata.
驚いた。海のないラオスの市場に、巨大なタチウオやダツが並んでいた。タイやベトナムの海から運んできたものであろうが、もしやまさかメコン川に…?タチウオやダツは、条件さえ揃えば川を遡上することもある。とは言ったものの、ここは河口から1600キロも上流地点。さすがに無いか…。
ラオス語とタイ語は非常にニュアンスが似ていることもあって、意思の疎通が可能だった。売り子と会話さえできれば、珍しい生き物を見つけた時に産地を聞き出すことができる。いわば新たな旅の始まりの場所なのだ。
僕はこれからも、世界の市場を回り続けようと思っている。