有明ターポンと呼ばれた魚(熊本県)
有明ターポンと呼ばれた魚(熊本県)
ヒラ(Ilisha elongata)という魚を御存じだろうか?別名を有明ターポンと呼ばれている。
とはいっても、この魚、有明海近郊のスーパーなどでは60cm程の個体で、300円程で店頭に並んでいる。釣り人の憧れであるアトランティックターポンや、日本では沖縄諸島の汽水域に多く生息するパシフィックターポンといった、いわゆるカライワシ目イセゴイ科に属する至高のゲームフィッシュの対象魚の仲間ではない。
彼らは釣りの対象魚としては、ちょっぴり地味なニシンの仲間である。
アトランティックターポン。全長250cm程まで成長し、原始的な形態を残し古代魚と言われる魚。写真は筆者が中米コスタリカで釣り上げた個体。
インド・パシフィックターポン。日本では沖縄諸島を中心に生息。アトランティックターポンと比較すると小振りである。
有明ターポンことヒラと熊本の美人アングラーSさん
私がヒラを初めて見かけたのはSNS。熊本の美人アングラーSさんが抱えていた写真にくぎ付けになったのが初めてだった。念のために記しておくが、くぎ付けになったのはSさんにではなく魚の方である。
厚かましくもSさんに連絡してみると、取材に協力して頂けるばかりか、案内まで快く引き受けてくれたのだ。と言う訳で、熊本県上天草のヒラを釣り上げ、彼らが何故に有明ターポンの称号を得たのかを明らかにすべく、若干の下心と共に福岡空港より3時間半車を走らせた。
有明ターポン捕獲編
天草に向かっている道中、Sさんより連絡が入り急な仕事で案内ができなくなったと言う事。とても丁寧に、ポイントなどの情報を頂いた。
美しい島々が点々と海に浮かぶ上天草。日が落ちる頃、人気のない漁港傍のポイントに僅かな寂しさと共に到着。
美しい島々の間に日が沈む。心なしか寂しげであった。
今にも朽ち果てそうな小舟が一層の寂しさを募らす。
早速一人キャストを開始したが、開始後1時間は時折手元に感じる微かな違和感以外、これといったアタリはなかった。
諦めずキャストを続けていた頃、Sさんからご連絡いただき、表層だけでなく中層もしっかり探るようにとの指示。言われるがまま中層を探る。
アジング用のワームを落とし沈めると『カカカッ』という細かいアタリが竿先から伝わった。鋭く合わせを入れた瞬間…ラインが一気に張り魚が疾走。水面を割って銀色の魚体が宙を舞った。何度もジャンプを繰り返したが、なんとか足元に寄せ堤防の上に引っこ抜いた。
遊泳スピード、繰り返されるジャンプ、足元に寄ってきた際にライトに照らされたルビー色の眼球。まさに最高のゲームフィッシュターポンの名に恥じない魚である。
堤防に横たわったヒラ。とにかく陸に上がってからも暴れる。写真を撮るのに一苦労。以下ぶれた写真がいくつかあるのはご了承いただきたい。
光り輝く体色。非常に美しいのだが、体表はぬめりが強く鱗が剥げやすい。ぬめりと共につかんだ手にまとわりつく。
ターポンの口周りに非常に似た構造をもつ。
更に1時間程経っただろうか、水面がにわかにざわつきだし魚の気配がしだした。どうやらヒラはある程度の範囲を群れになり回遊している様で、その回遊にあわせて群れをとらえれば時合到来と言う訳だ。
海面をライトで照らすと、無数のオキアミが泳いでいる。同時にその周辺に魚の影がざわついていた。そこに投げ込めば入れ食い状態。1キャスト1バイトの状態が続いた。繰り返されるジャンプと鋭い遊泳。5バラシしながらも60cm程を最大に6匹のヒラを釣り上げる事が出来た。
陸にあげた瞬間、捕食していたオキアミを吐き出した。群れでオキアミを追い捕食していたようだった。
使用タックル:
ロッド:Abu Garcia HSPS-664L MGS
リール:Abu Garcia Cardinal II SX 2000S
ライン:PE 1号
リーダー:12LB
使用ルアー:JH84アジ弾丸3.0g
ECOGEARグラスミノーSS1-1/8 color :010パールグロウ
有明ターポン調理編
さて、東京に持ち帰ったヒラ。この魚、なんでも全身が骨でおおわれており、非常に美味しい魚ではあるが食すにはこの骨の処理に手がかかる。と言う事で、食用として人気がないようだった。
調理の始めにしっかり骨切を行った。
実際に骨切を行ったがたいして難しいものではなかった。今回は和食として3品を調理。
⓵ヒラの刺身
独特の風味ともっちりした食感。時折感じる小骨の食感が新鮮なお刺身。骨切を丹念に行えば十分に食すことができる。というよりかなり上質な刺身。
⓶ヒラのあぶり
焼くことによってもちもちした食感はなくなりホクホクの白身に変わる。
⓷ヒラのなめろう出汁茶漬け
ネギ、大葉、味噌、ヒラを叩いたものをシッカリ混ぜ絡ませる。
胡麻を振り熱いだし汁を掛ければ完成&絶品の締め料理。
夕飯の食卓にはヒラのフルコースが並び、家族で美味しく頂いた。
食卓を囲んで天草の景色が綺麗だったこと。
ヒラとのやり取りが実に楽しかったこと。
今回お世話になろうとした美人アングラーSさんのこと。
美味しいヒラを食しながら会話もはずんだ。
すると二人の娘から若い女性と釣りを楽しもうとした下心にお説教が始まった。そのお説教は1時間も続き、ヒラの骨より更にもチクチクと胸に刺さった…