鮎掛け? 石化け? 北陸アユカケ釣行
鮎掛け? 石化け? 北陸アユカケ釣行
アユカケという魚をご存知だろうか?私も子供の頃に読んだ釣りの漫画でアユカケが自身と同じくらいの大きさの鮎を頭部側面にある棘で引っ掛けて捕獲している様子をみて以来、この魚に対しての非常に強い憧れを抱いていた。
今回は秋も深まる北陸のとある河川に産卵のために川を下る鮎を捕食して大型化するというアユカケを狙って車を走らせた。
アユカケとは
日本固有種の魚であり、太平洋の茨城以南、日本海側は青森県以南の本州、及び四国、九州の一部といったかなり広範囲に生息している。
しかし、本来であれば河川の中流域の砂礫底質を好み生息するがアユカケであるが、堰堤などで遡上を阻害されて生息域が限定されつつあり、また生活排水等による水質の悪化で現在は生息数を減少させ、希少な野生動物・絶滅危惧種として多くの自治体に指定されている。
また、遊泳力に劣るアユカケは待ち伏せ型の捕食者であり、石と同化して姿を隠し所謂『石化け』により気配を消すことが知られている。
今回は鮎を掛ける行為と共に、石化けに関しても是非観察してみたいと思う。
アユカケを釣ってみる
ポイントに到着。瀬の下流にある深みにアユカケが潜んでいると予測。
東京から6時間のドライブを経て新潟のある河川まで到着した。川を覗いてみると
川底には大小の石がゴツゴツと敷き詰められ、また澄んだ流れの中に数匹のアユとサケが悠遊と泳いでいるのが見えた。間違えなくこの流れの中にアユカケが潜んでいるであろうと確信し、早速タックルの準備に取り掛かった。
小型のワームとジグヘッドを用意し大きめの石の間に落としてみる。
一つ目の石の周辺を探っていると回りの石が動いたような気がした。同時に竿先に小刻みではあるが力強い引きを感じた。
竿を持ち上げてみるとワームを丸呑みしたのは石ではなく魚であった。
なんと開始5分で最初のアユカケを手にすることができた。初のアユカケ!口の中がオレンジに染まる婚姻色。
その後も大きな石の周りを丹念に探り続けると、次から次へとアユカケは釣れ続けた。石が動いたかと思うと一気にワームを丸のみにする。これがアユカケの真骨頂、石化け!!
1時間程釣り続けたであろうか。持参したバケツの中はアユカケで一杯になった。
十分釣りあげたのでここで詳しくアユカケを観察してみることにした。厚い唇に細かい歯。そして口の中に見える鮮やかな婚姻色
ゴツゴツとした頭部。鱗は無く全体的にぬめりがある感じ。
頭部側面の棘。皮膚に覆われていて鋭さはないが、実際に先端を押してみると鋭い骨を感じる。これで鮎を引っ掛けるというが…。
胸鰭。尾鰭に対して大きい。大きな頭部を支えて遊泳する為であろうか?
頭部に対して非常に体が細い。淡水に生息する魚では中々見ない形状。
そして尾鰭の見事なままでに小さいこと…
アユカケの伝説
同時にアユカケに関して確認したかったこと2点をある程度確認できた。
1.『石化け』
川底にじっと身をひそめるアユカケ。よく見ていただければ写真内に2匹のアユカケが確認できる
確かに川底にいるアユカケは殆ど動かず、ワームで誘うと石が動いたかと思うと針掛かりした。どうやら周りの石の色に合わせて保護色へと皮膚の色を変えているようである。そして、待ち伏せの間は殆ど動かない。つまり、石化けは存在した。
2.『鮎を掛ける』
今回は使用したのはルアーであったが捕食の際はまっすぐに疑似餌に突進し一気に一飲みにするような捕食をし、頭部の棘を引っ掛けようとする素振りは全くなかった。『鮎を掛ける』はあくまでもこの異形の魚に対してつけられた伝説ではないかと思われる。
以上、決して学術的な見地ではないが、釣り人としてアユカケの伝説に挑み、そして解き明かした気分になった私は上機嫌でさらに東北の旅を満喫し帰宅したのは翌々日の深夜3時となった。『早めに帰る』とだけ妻に伝えて出掛けた私は翌朝布団の中で『石化け』ならず『床化け』気取りで気配を消していたのだが…
敢え無く、妻に発見され朝帰りをひどく叱られたのは言うまでもない。どうやら、わが家にはアユカケ伝説は存在しないようだ…。