観て、触って、深海魚を学ぼう!「戸田深海魚大学」を受講してきた (静岡県・沼津市)
観て、触って、深海魚を学ぼう!「戸田深海魚大学」を受講してきた (静岡県・沼津市)
2017年3月12日(日)に静岡県は戸田の街でとあるイベントが開催された。
その名も「戸田深海魚大学」。
深海魚に造詣の深い著名人らを招き、トークセッションや深海鮫の解剖などを通じて深海の神秘を学べるというなかなか画期的なものである。
これはおもしろそうだ。深海魚の魅力を学ぶべく特別講義に出席してきた。
深海魚の聖地・戸田へ峠道を走ると見えてきた。「深海魚の聖地」とも呼ばれる戸田の街並み。
…結果から書いてしまうと、深海魚大学では想像をはるかに超えて楽しく、ためになって、人にすすめたくなるような時間を過ごすことができた。
もっと多くの人たちにこの催しを、そして戸田が推し進める深海魚プロジェクトについて知ってもらうために、当日の様子をかいつまんで紹介していきたい。
深海魚大学の会場となるのは「くるら戸田」。2015年に開駅した新しい道の駅である。
受講者に配布されるバッジ。メンダコがかわいい。これをもらえるだけでもけっこう満足。
受付で受講料(中学生以上1,000円。小学生以下は無料)を支払い、教室へ。
ちなみに受講者にはメンダコがあしらわれたバッジが配られる。これが深海魚大学の学生証だ。会場は大盛況。家族連れのお客さんも多かったが、小さなお子さんたちは最前列の席に案内されるなどの配慮も。
会場には子どもたちがたくさん!いまや深海魚は子どもたちにとってのスター。恐竜やカブト・クワガタに負けない花形生物の仲間入りを果たしているのだ。
ココリコ田中登場!
午前10時、いよいよ開講だ。
沼津市の職員さんからの挨拶が終わると、講師の紹介とオリエンテーションが始まる。真っ先に会場へ飛び込んだのはこの人だった!
ココリコの田中直樹氏。動物好きで知られ、海洋生物(特にサメ)にも造詣が深い。今回、その手腕を買われて戸田深海魚大学の特任教授に任命された。
盛大な拍手で迎えられたのはサメマニアとしても知られるお笑い芸人の田中直樹さんだった。
彼はただのゲストではなく、この戸田深海魚大学の特任教授という重要な役回りである。ぴったりな人選だ。
さらに二名の専門家も講師として登壇。
東京大学大気海洋研究所助教授の猿渡敏郎氏。当日は自身の専門でもあるチョウチンアンコウについての講義と深海鮫の解剖を担当。終始笑顔のナイスミドル。
サイエンスライターの山村紳一郎氏。様々な実験を通じて深海とそこに生きる魚たちの秘密を解き明かしてくれる。ユーモアあふれる語り口で会場を沸かせた。
講師を務める三名は息もぴったり。
チョウチンアンコウってどんな魚?水圧って何?
こうして無事に開講した深海魚大学。
お待ちかねの一時限目は東京大学大気海洋研究所の猿渡先生による講義。
演題は「チョウチンアンコウの不思議!」である。
猿渡先生の講演。テーマは深海魚の代表格ともいうべきチョウチンアンコウ。
あれ。なんか…難しくね?
おー、チョウチンアンコウとは大人も子どもも喜びそうなキャッチーな分野で来たな。
と、思ったのだが開始早々スライドには難しげな単語が並ぶ。
おいおいやべーぞ!これ講師が暴走して子どもたち置いてきぼりになるパターンじゃないのか。
…というのは杞憂だった。
はじめはどうなることかと心配したが、猿渡先生の平易な言葉による解説と豊富な写真で子どもたちも釘付け。もちろん大人も。うーん、お見事!
チョウチンアンコウって見た目だけでなく生態も面白いんだなー!
そして続く二限目。
お次はサイエンスライター山村氏による科学実験コーナー。
シンプルな、けれど明快な実験で圧力というものが何か、深海生物にどう関係するのかを説明する山村氏。語り口も軽妙。
コップやマシュマロなど身近なモノを使った実験で「圧力」について楽しい講義を展開。深海魚を語る上で欠かせない概念だ。
水圧というものを理解した上で、深海で生きるにはどんな仕組みが必要か。あるいはなぜ深海から魚を引き上げると眼や内臓が飛び出してしまうのかといった疑問を解説。
真剣に、けれど楽しげに聞き入っている子どもたちの表情が印象的だった。
白熱の深海魚トーク&クイズ大会
三限目は三名の講師が全員揃って登壇。
「深海魚HEDAトーーーク」と題して深海魚トークやクイズ大会、質疑応答が繰り広げられる。
これがまた大人も子どもえらいこと盛り上がる。一時間があっという間に過ぎてしまった。
質問コーナーでは老若男女問わず挙手の嵐。
あまりに鋭い質問に講師陣がたじたじになる場面も。将来が楽しみだ。
賞品の特製ポロシャツをかけたクイズ大会でも優勝争いに残ったのは子どもたち!信じられないほどの知識量。「戸田における深海底びきの禁漁期間」とか、お前らそんな情報どこで仕入れてきたんだ。
深海鮫の解剖も
さて、いよいよ戸田深海魚大学での講義も佳境。
ここで本イベント一番の目玉、本物の深海鮫をまるまる一匹使った解剖実習が始まった!
怪獣のような深海鮫を前に子どもたちもウキウキ。あと、田中さんも明らかにテンションが上がっていた。本当に好きなんだなぁ、この人。
材料となるのはヨロイザメ。真っ黒な体と緑色に光る眼がいかにも深海魚!
深海のサメのお腹の中は大半が巨大な肝臓で占められている。これは水より軽い肝油で浮力を得るためなのだとか。ほへー、勉強になるね!
解剖の様子はスクリーンに映し出されるので後ろの席でもしっかり勉強できる。
座学の後は深海魚を触ろう!撮ろう!
楽しい時間というのは早く過ぎてしまうもの。この世の常である。
戸田深海魚大学もあっという間に閉講の時を迎えてしまった。ココリコ田中さんへの戸田深海魚大学特任教授任命式。
最後はみんなで記念撮影!
しかし!まだまだ楽しみは残っているぞ!
教室の外では深海魚大学と並行してもう一つのイベント、本物の深海魚を見て、触って、撮れる「深海魚撮影会」が開催されているのだ!
※深海魚撮影会の詳細についてはこちらの記事をどうぞ
駐車場にはなんと大量の深海魚たちが運び込まれていた。
撮影会は深海魚大学の閉講後も引き続き楽しめる。
もちろん、撮影会のみの参加だってOKだ。
座学で頭をつかったあとは、実物を間近で見て、触って、直感的に深海魚に親しもう。
写真を撮りまくる大人たち(背後が物々しい感じになっているのは、たまたま同じ会場で地域の避難訓練が行われていたため)。
その一方で深海生物を触りまくる子どもたち。物怖じなんてしない。つついて、掴んで、持ち上げて、最終的には持って帰る子も。
ヘラツノザメの仲間とミシマオコゼの仲間。どっちもブサイク…じゃなくて、とてもユニークな顔をしている。
深海のアイドル 、メンダコもいた!しかし、やや変わり果てた姿に…。
深海性のエソの一種、ミズテングもたくさん。
小物も見逃すな!レア深海魚が紛れているかもしれないぞ。これは発光器を多数まとったムネエソという魚。
魚らしからぬシルエットのキホウボウとフウリュウウオは子どもたちに大人気だった。
リニューアル予定の駿河湾深海生物館とは
さて、ここでまた話を深海魚大学に戻そう。
実は閉講の直前に「駿河湾深海生物館リニューアル構想」なるものが発表されたのだ。
駿河湾深海生物館がこの夏にリニューアル!沼津市が深海生物に大きな期待をかけているのが伝わってくる。
駿河湾深海生物館とは沼津市営の戸田造船郷土資料博物館に併設された小さな博物館で、駿河湾で採集された深海生物の標本が展示されているという。
それをこの夏、ココリコ田中さんはじめ今回招集された深海魚大学講師陣のプロデュースのもと、大幅に刷新するというのだ。
たしかに、構想図を見る限り素晴らしい館になりそうだったのだが…。
その前に、今現在の深海生物館はどんな感じなんですかね?ちょっとお邪魔してみよう。2017年3月現在の駿河湾深海生物館。くるら戸田の目と鼻の先、岬の先っちょにあるよ。
ちなみにこちらは併設の戸田造船郷土資料博物館。造船資料や日露友好の歴史を紹介している。郷土史好きにはこっちも楽しいよ!
「リニューアルが必要ってことは、展示もショボいんだろうなー?」と失礼なことを考えながら入り口をくぐると…
えー!!何これすごいじゃん!!
3メートル近いサケガシラに
ゴブリンシャークことミツクリザメの剥製も!
深海の古代鮫、ラブカの標本も複数!
そして戸田といえばコレ!世界最大のカニ、タカアシガニ!でけえ。はんぱねえ。
現時点ですでに相当充実してるんですが…。
それもそのはず。なんと展示されている深海生物の標本は300点にもおよぶとか。
しかし、「今よりももっともっと見やすく、楽しく、学べる館になりますよ」とは関係者の談。うーん、今から楽しみだ。
おまけ : 戸田では深海魚を食べられる!
当日は12時から13時半まで昼食のために休憩時間が採られた。
食堂を探して港の周辺を散策してみると、タカアシガニやゲホウ(トウジン)などを使った深海魚料理を出す店が並んでいるのが目に入った。
これはぜひ食べておきたい!!
食堂の看板にタカアシガニが!
と思ったら店先の水槽にも!しかもたくさん!
しかし、みんな考えることは同じ。
目をつけたお店は深海魚大学の受講者で満席だった。
残念!みんな、僕らの分まで深海魚の味を堪能してくれ〜。
「深海料理」なる魅力的すぎる看板もあちこちに。しかし、この日は深海魚大学の受講者たちで満席!ちくしょー、次は必ず舌でも深海魚を学んで帰るからなー!
※「戸田深海魚大学/深海魚撮影会」お問い合わせ先 : 戸田深海魚プロジェクト(戸田観光協会)