20年の時を超え出会う、世界最大のナマズ「ピライーバ」 南米・ガイアナ共和国
20年の時を超え出会う、世界最大のナマズ「ピライーバ」 南米・ガイアナ共和国
ピライーバ。
世界最大のナマズで、学名はBrachyplathystoma filamentosum。南米のギアナやブラジル北部の大河に生息しており、全長は3.6メートルに達することもあるとされる。
俺がピライーバの虜になってから、もう20年も経つ。特に、潜水艦のような特大個体は夢の魚であった。
■”あいつ”が釣れるのならば…
ガイアナという国での釣りには、もう満足していたはずだった。
以前に彼の地を訪れた際は自身初となるピライーバをはじめ、巨大なピーコックバス(バタフライ)、巨大ピラルク、ジャウー…その他多くの魚種を釣ることができ、とても満足していたのだ。もう一度足を伸ばしたところで、あの旅を超える成果を上げられるとは思えない。
しかし、そんな経験をしておきながら、「もしかしたら。ひょっとしたら。今度こそ“あいつ”を釣ることができるかもしれない…。」という誘惑に負け、再びチケットを買ってしまったのだった…。
過去のガイアナ釣行では自身初となるピライーバもレギュラーサイズながら複数キャッチ。これで満足したつもりだったのだが…。
何か奇跡が起こって、まだ見ぬ”あいつ”が現れてくれるのならば……。
そう、ピライーバ。上の写真のような特大個体を釣りたいと思いはじめて早20年。
今思えば、1995年にテレ朝で放送された「驚異の魔境アマゾン、世界最大の巨大怪魚ピライーバに挑む!」を見てから俺はピライーバの虜になったのだと思う。
当時からピライーバは、生息数が減少し「幻のナマズ」と言われていた。しかし、インターネットの普及に伴い、ブラジルでは数が激減しているが、隣国では捕獲できるといった情報がチラホラと入るようになり、再び忘れかけていたピライーバ熱が燃え上がる。
今回の釣行は各人の希望に応じて1週間コースと2週間コースを選べるらしい。
「よし、1週間だと釣れる可能性は低いだろうから、2週間行ってやるだけやってみよう!!」
■大物を釣るための準備体操
まず、今回旅を共にするメンバーを紹介する。
一人目:トモス・・・ブログがきっかけで知り合った大学生、僕のことを兄のように慕う変わった子。トモスの彼女はボクと彼がデキているんじゃないかと疑っているらしい。
二人目:セイヤ・・・一年中魚を追いかけている変な子。ここ一年半は彼と行動を共にすることも多く、自宅へ帰るとなぜか彼がソファーにて、くつろいでいることが多々ある。というか半居候状態。
三人目:エッグさん・・・見た目はおっさん、中身は子ども。人を楽しませるのが好きで常に小道具がポケットの中に仕込まれている。得意技はマジック。初めて会う人には必ずマジックを何個か披露しては驚かれている。
四人目:サブ・・・2013年のガイアナ釣行で彼とは知り合った。見た目は堅気じゃないが心はとても優しい青年で、年下のメンバーは彼を兄貴のように慕っている頼もしい一面をのぞかせている。
五人目:田川・・・鳥取からやってきたアングラー。今回ガイアナは2回目でどうしても自分よりデカイナマズが釣りたくて参加。釣り具を売らない釣具屋を経営しているらしく、革製品などを主に扱っているらしい。デス! デス! うるさいデス!
六人目:武藤さん(ムトゥー)・・・去年のタイ釣行にて初めてお会いし、その後交流を深め今回ガイアナへ一緒に行くことになった。一時期は120キロの巨漢であったが、自分よりデカイ魚を釣りたいがため、自らサイズダウンを図り現在は70キロ台に。気は優しくて力持ち水産加工のエキスパート。
七人目:塾長・・・フェイスブックで知り合い、最近では、頻繁に彼の家にお邪魔しては綺麗な奥さんと可愛い娘たちに美味しい料理をご馳走になっている。深海釣りを得意とし、今回は巨大ワニを捕獲しようと考えているようだ。
八人目:難波くん・・・7年前のイタリア旅行中に知り合い意気投合、その後、モンゴルやタイへ一緒に行ったり飲みに行ったりする仲。最近良いものを食べすぎているせいか若干肥満気味になっているため、メンバーからはベイマックスと呼ばれていた。
九人目:片桐さん・・・「怪物出るよ」「ボンバダー!!!」が口癖。歳が同じで趣向が似ているせいか妙な親近感がある。
十人目:俺。今回のガイアナ釣行でもっともやる気のない人。
そんなメンバーと共に東京からサンフランシスコ→ニューヨーク→ポートオブスペインを経由しジョージタウンへ到着。
機内から降りると南国特有のムワッとした生ぬるい空気が体を包んだ。イミグレを順調に通過し、荷物を探すと、同じ便にて同行した仲間の荷物は全てあるようだ。
「良かった!! 全員無事に釣りが出来る!!」と思った矢先、僕らを迎えに来ていたオーマ(ガイドの奥さん)が田川に仕切りに何か言っている。というか、むしろブチ切れている……。
田川「しげるさん、英語わかりますか?」
ブチ切れるオーマに困惑する田川は僕に助け船を求める。英語は良くわからないが何を言いたいかはすぐにわかった。
どうやら事前に到着したムトゥーさんとエッグさんの荷物が到着しておらず、僕らの便で荷物が来ているかを調べてほしいと言っていた。
ようやく言いたいことが理解され笑顔になるオーマ。とりあえず2人の荷物を探したが見つけることが出来ないまま、一向はホテルへ向かった。
路地裏のホテル。酒を飲み、明日から始まる釣りの話に花を咲かせる以外に娯楽は無い。
翌朝、セスナに乗り込み目が覚めると目的地手前の村に到着していた……。ここからさらにボートで1時間半上流へ移動する。
僕とエッグさんは一番速そうなボートに乗り込み移動を開始するが、発進直後からエンジンの調子が悪く、一向に進もうとしない。ボートの調子は直らないまま時間だけが過ぎて行き、エッグさんもグロッキー気味だ。
ようやくキャンプ地に辿り着くと皆すでに準備を完了しており、すぐにでも出れる状態であった。ただ、この日はガイドの気分が乗らなかったようでボートでの釣りは出来ず、サブとセイヤでボートを操船し、対岸でピラニアやピーコックを釣って楽むのであった。
■開高健を唸らせた”泥”
南米へ来たらどうしても食べてみたい食材があった。それはカランケージョと呼ばれる泥ガニだ。そして幸いにもセイヤとエッグさんがカランケージョを大量に購入し、キャンプへ持ち込んだのだ。
エッグさんは、カランケージョをずっと食べたかったらしく、夕食後も「カニを茹でよう、カニを茹でよう」とずっと言っていた。
あまりにカニカニうるさいのでムトゥーさんがお湯を沸かし、カニを茹ではじめる。そしてメンバーが夜中のビーチでカショーハをトップで釣ろうと躍起になっているところに。
「カニが茹で上がったよおおおおおおおおおおお!!!!」
静かなジャングルに「カニ」というワードが響き渡り、メンバーも食堂に集まってきた。さすが、水産加工のプロだけあってカニは良い感じに茹で上がっていた。
開高健を唸らせたカランケージョが遂に目の前に……。唾が出るのを抑えきれなくなる。とりあえず試食のため、2人で一匹を食す。そして沈黙するメンバーたち…。
メンバー「まっず!! 泥だ!!」
僕は困惑した。「おいおい、そんな筈はないだろう」と口に入れた瞬間
「あ、泥だねこれ(笑)」
皆と意見は一致した。恐らく泥抜きができておらずカニミソと泥が絶妙にまじりあい、泥ミソとなったようだ。しかし皆が「泥味でマズイ」と言っている中で、この泥ミソを絶賛する奴らが居た。
セイヤ「やば! うっまこれ! まじ美味いこれ!!」
エッグ「美味しいよーこれ。フィリピン思い出す」
僕等とは生きてる次元が違ったようだ。
カランケージョに期待を裏切られてしまった僕は、早々に酒に手を付けてしまったようだ……。
■怪物だよ!! 怪物がでたよ!
夜が明けた。
釣り2日目、今日から本格的な釣行が始まろうとしている。各自、思い思いの釣りをしようと眼光にヤル気がみなぎっていた。僕はさっそくナマズを狙ってみたいと思い、暇そうなサブを誘いボートに乗り込んだ。ボートを操船してくれるのは「ジャッキー」と名乗る良く笑う青年だ。
「おい、ジャッキー! 深いところへ行ってくれ。とにかく深いところだ」
まずは試しに、前回の釣行でよくナマズがヒットした場所へ行くよう指示を出す。キャンプから一時間ほど下流へ下った場所でボートを止めてもらう。
「ジャッキー、アンカーを降ろしてくれ!」
ジャッキーが「OK」と言い、しばらく経つがボートはゆっくりと下流へ流された。
「ジャッキー、アンカーがボトムに付いてないぞ?」
ジャッキーの方を再度振り向くとジャッキーは「アンカーとか持ってねえし」みたいな顔でこっちを見ている。
「アンカーねえとか終わってんだろ!! 根掛かりメッチャするじゃん(笑)!!」
ジャッキーはアンカーが無いなりにオールでボートが動かないように定位置に留めようと頑張っていた。そんなジャッキーを見て、僕も自分で根掛かりしないように努力することにした。そしてある方法に行きついた。
シンカーがボトムに着底したら1m程度ラインを撒いて餌を底付近でユラユラさせることにした。これなら根掛かりも大幅に軽減でき、フックやラインシステムのロストが減る。ナマズが釣れるかどうかは知らないがこうするしかない!
そしてついに、竿先がピクピクと動き出す。フッキングしてラインを巻き取るが明らかに狙っているあの魚とは違う……。
上がってきたのはバルバードだった。ここではエサ取りの部類に属するナマズでピーンと伸びた髭が特徴的だ。今回のファーストフィッシュはバルバードとなった。
その後、僕の竿には一向に当たりは無く、サブの竿に当たりが連発し続けた。
「ヘタレ釣りはダメなんかな……」
釣り初めから3時間が過ぎようとしていた。そろそろ、釣れないし場所を変更しようとした時だった。
「グン……グングンッ……グングングングン……」
僕の竿に怪しい反応が出る。どうせピラニアだろ?!ヘタレ釣法をする僕にピラニアが冷やかしに来たに違いない。グングンやってても無視することにした。竿の揺れも収まり、ようやく諦めたかと思った瞬間だった。
「ジイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!!」
ラインが凄まじい勢いで引き出される!
サブ「(東北なまりで)沖山さん、ライン出てますって!! 合わせないと!」
興奮するサブに「焦るな焦るな」と諭しながらゆっくりと竿を握り、レバードラグを絞めこんだ。刹那、ボートの中ほどに座っていた僕はボートの先端まで引っ張られ転んだのだ。何が起きたか分からない。
持っている竿がボートの縁に叩きつけられる。
「え?! 何?! 何が起きたの!」
ジャッキーとサブは「この人なに遊んでるの?」と思ったらしい。どうやら購入したばかりのリールのドラグ設定が23kgとマックスになっていたのが原因のようだ。ドラグを調節している最中、ボートは上流に向かって走り出した。ジャッキーの顔が引きつっている。
「奴か! 奴が来たか?!」
ものすごい引きだ。巨大ジャウーか? それにしてはスピードがある。もしかして…。奴のことを考えた途端、心臓の鼓動が早くなり、ドクドクドクドクと身体を伝って耳まで聞こえた。
今までに感じたことの無い重さが竿から伝わってくる。
ここは水深50mとポイントの中でも非常に深場ので、なおかつ岩が多い場所だった。ラインを出され過ぎると岩に擦れたラインが切れてしまう。それだけは避けようとドラグを締め込み、がむしゃらに竿を持ち上げながらラインを無我夢中で巻いた。
息が上がり、「あっ!」とか「うっ!!」と声が出る僕を見ながらサブが笑う。
サブ「絶対演技でしょ! それ!(笑)」
「ちげーよ! 怪物だよ!! 怪物がでたよ!」
そして残りのラインの目印が10mの所までようやく巻き上がる。あと少しであがるぞー! 10メートル…5メートル!
大きなバブルが水面に上がり弾ける。そして真っ白な腹の部分がゆっくり水面に近づいてくる。
「ウアアアアアア!!」
「ピライーバが来た! うおおおおおっしゃあああああああああ!」
サブも興奮している。
「まさか釣れるなんて!」
こんな早くに釣れるとは思わなかった。
2m10cm、100kgオーバーの見事なピライーバ。まさか釣れると思ってなかったし、20年来の夢が叶った。嬉しくて泣きそうになった。
でもね、思ったんだ。
「釣り初日でこんなの釣れちゃってモチベーション保てると思うの?」
「ヤバい……どうしよう……もう家に帰りたい……」
サブ「オキヤマさん大丈夫です! これをまぐれで釣れたと思われないように後2匹釣ってハットトリックかませばいいんです! 後2匹頑張って!!」
本格的に海外釣行を始めてからアマゾンにアタックしたのは4年前。そこから追い続けた巨大ピライーバ。毎回挑んだ時は姿すら現さなかったのに気を抜いた途端これだ。笑うしかない。
これだから釣りは面白い。
釣り開始からわずか3時間ほどで、ガイアナでの目標を達成してしまったのであった。
■ガイアナ遠征、小休止の巻
結論から言ってしまうと僕のガイアナ遠征は初日で早くも終わってしまった。海外遠征で一番怖いことは、初っ端でデカい魚が釣れてしまうことだ。
言わずもがな、僕の場合はモチベーションが保てなくなってしまい、釣りに対しての意欲が無くなってしまう。
「デカい魚が沢山獲れるとかめっちゃいいじゃん!」と思われるかもしれないが、そういう訳でもないの。最近は。
そんな訳で前半のダイジェストを写真でお送りします。
岩場に立ちこんでルアーを投げる
砂浜へ上陸し、カメの卵を掘る漁師
卵は食用になるが、あまり美味しくはない。
ピライーバだけでなく、いろいろなナマズが釣れてくる。
気分転換にルアーも投げる。美しいピーコックバスが水面を割る。
ペーシュ・カショーロ。ガイアナでの呼び名は「パヤーラ」
砂地には淡水エイもたくさん潜んでいる。尾に毒針がある種類もいるので、水辺へ立ちこむ際は注意が必要。
レッドテールキャットフィッシュ(現地名:バナナフィッシュ)も大物が姿を見せた。
メタルバイブレーションを使ったジギングではいろいろな小~中型魚が釣れて退屈しない。
珍魚・トランペットナイフフィッシュまで!
子ワニも獲れたし、
大ワニも獲れた!
■なめてかかった”小物”の”真の姿”
釣行も中盤に差し掛かる頃、一週間組が一足先に日本へ帰る日がやってきた。彼らはまだ釣り足らないらしく、髪を引かれる思いで日本へ帰国した。
「塾長、ムトゥーさん、片桐さん、難波君! アデュー! また皆で一緒にどこか行こうね!」
その後、難波君と塾長は便の変更や乗り遅れに見舞われ、到着予定日を2日ほど遅れて帰ったそうだ。海外釣行はこのようなトラブルは日常茶飯事なので、なるべくタイトなスケジュールで動くのはやめたほうが良い。
そして彼らを見送った僕等は釣りに出かける。ちょうどビールが全て無くなったため、村まで下りて買いに行こうと思い、今日は釣りを休もうと思っていた。
しかし、気の利く漁師・ウエマンが「買ってきてやるから待ってろやクソが」といつものように男らしい一面を見せてくれ、彼らを送るついでに買いに行ってくれた。
僕等は釣りに行けることになり、今日はエッグさんと一緒のボートに乗ることに。ナマズが釣りたいと言うエッグさんに賛同し、今日もナマズ釣りへ。
今日の船頭はリオと名乗るがっちり系漁師。
「リオ! 今日もナマズ釣りだ!! ラウラウを狙うぞ!」
俺がそう言い放つとリオは「ニヤッ」と不敵な笑みを浮かべ、ボートを発進させた。下流へ下ること30分。到着したのは川の流れが合流し、深場になっている地点。
そのポイントは何度か来たことがあったが、良い釣果には恵まれなかった。リオはポイントへ到着すると直ぐさまアンカーをボートから降ろし、眠りについた。
「おいおい、このポイントで居座ろうってのか? 我らに残された時間は有限なんやぞ! 無限には無いんやぞ! エッグさんも何とか言ってやってくださいよ!」
…エッグさんも寝ていた。しかし、ちゃっかりエサは投入していた。僕はエッグさんとリオが起きないように、そーっと仕掛けをつくったり初日に獲ったピライーバ(ラウラウ)の写真を見返しニヤニヤしながら時間を潰す。空は曇っていて日陰の無い場所で釣りをするには絶好な天気だ。
雰囲気的にはめっちゃ釣れそうな感じなのだが…。そう期待すると大概釣れない。竿先をじーっと見つめていると竿先が動き出す。
「ブルブル……」
ナマズが餌の周りに居るのがわかる。息を凝らし、じっと待った。ラインが出だし、一呼吸おいてフッキングを入れる。
「乗った!」
「お! ナマズきたー? デカイ?」
エッグさんも起きたようで大きさの確認を僕にした。竿に伝わる重さも引きも大したことが無かった。
「んー、たぶん15キロくらいのレッドテールじゃないですかね? あんま大きくな……」
「大きくない」と言いきろうとした直後、竿に強烈な引きが襲った。
「大きくなくなくない! デカい! たぶんでかい!!」
小物宣言を撤回し、真面目にファイトする体制を整える。
「リオ! アンカーをあげて! ラウラウだ!」
ラウラウと言った瞬間、眠そうなリオの目が漁師の目に変わるのがわかった。手早くアンカーを上げるとボートは前回同様にラウラウに引っ張られ動き出す。しかも今回の方が引きが激しい。激しい引きに耐えつつラインを巻いては出され、巻いては出されを繰り返す。
ロッドを持ちあげようとしても中々上がらないし、釣られまいと下流に向かい走っていたと思えば方向転換し、上流へ走り出す。しばらくファイトを続けるもピライーバはなかなか寄って来ようとしない。
「何てしぶとい野郎なんだ! あがれええええ! あがってこおおおおいいいいい!!」
持ち上げると言うよりは、支えるのが精一杯といった感じで、体力の消耗が続いた。埒があかず、じれったくなった僕は、リオに浜辺に船を移動するよう指示し、ショアからのファイトを選んだ。
ラインの角度が変わってくるため、ショアでやるほうが断然釣り上げるには楽になる。徐々にピライーバとの距離は縮まって行く。水面にピライーバの背びれが見えた瞬間、僕とエッグさんは絶叫した。
「ウオオオオオオオオオオオああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
リオも興奮し、目があった瞬間手を握り合った。浜辺の周りをゆっくりと泳ぐピライーバが、浅瀬に乗り上げたところでリオがランディングしようと飛びかかる。
「2匹目キター!!」
やはりこの魚だけは別格だね。興奮した。めっちゃ興奮したよ! 写真を一通り撮り終えリリース。
完全にやり切った。もういい、本当にお腹いっぱい。
「サンキュー! ガイアナ! サンキュー!!」
その後はエッグさんに何度もあたりはあったが、エッグさん自身が寝ながら釣っているため、良い感じで根に潜り込まれ、惜しくも獲れず。
「うああああああ! くやしいいい!」
とか言いつつ寝るエッグさん。
それでも釣っちゃうんだこのオジサン。
眠り釣法でジャウーを釣り上げるエッグさん。場数が違うね。その後はナマズ釣りにも飽き、カメを釣りに行こうと更に下流へ長距離移動。その間もエッグさんは
寝ていた。というか基本寝ている。
「このオヤジいつも寝てるな(笑)」とリオも苦笑い。
そして新たなポイントへ到着し釣りをしようと準備をしていると、怪しい雲が遠くからやってくる。
その間もエッグさんは寝ているのだが、雨が顔に落ちるや否や、バッグからビニールカッパを取りだし頭からかぶって就寝。
釣りの間、終始眠りつづけたエッグさん。しかし帰りの途中に大きな虹を発生し、それを見つけるや子供のようにさわぐエッグさん。
虹の発生場所が見え、その中に突入した時は興奮ものだった。僕等は虹を掴まえたと大喜びした。ユルいけど、最高にイケてる1日だった。
■ハットトリック!
何だかんだと言いながら12日間があっと言う間に過ぎ去り、釣り最終日がやってきた。昨夜、セイヤが現地ではタトゥーの原料として使用している実を持ち帰り、メンバーに「良い虫よけの薬がある」と言って皮膚に塗らせて悪戯をしていた。
僕もサブの乳首などに塗りたくったのだが、全く皮膚に反応が無いため、飽きてそのまま就寝した。朝起きて被害にあった者たちは悲鳴を上げた。
「ピギャアアアアアア!!」
「何やこのアザみたいな紋様は! しかも頬に付いてるし!」
慌てて石鹸を手に取り川に向かう。必死に洗ってもタトゥーの原料は落ちる気配をみせない…。
ガイドやテルマが言うには「1~2か月は取れないから安心しろ」とのこと。
そして時間が経つにつれ、さらにこの色は濃くなっていく……。何なんだこのヤバイ実は。僕自身、そこまでの被害は無いものの、サブなんてひどい有様だ。
サブ「これ社会復帰出来ないですよ、沖山さん。ウフフフフ。」
そして騒いでいても時間の無駄と悟り、釣りに出ることに。本日の同船者はサブと操船はマーク。今回はこのメンバーでどうしても最後を締めくくりたかった。
しかし、皆が出発しても我々のボートは出発せず、その場から動こうとしない。どうやらエンジンの調子が悪いようで1時間ほどロスして出発した。幸先が悪い……と思った矢先、投入後すぐにチビイーバが釣れる。
この一匹を釣ると直ぐにポイントを変えるとマークは言った。どうもマークはデカいピライーバを釣りたいらしい。水深50mある深場のポイントへ向かう。ピライーバは何ヶ所か好みのポイントがあるようで、そこを廻っているらしい。
「奴らは寝る場所や餌を獲る場所が異なるんだ」とはマークの談。
ポイントへ到着すると他のメンバーも全員このポイントに集まり、釣りをしていた。こうなると誰にヒットするのかとても気になるところだ。
僕等の船は、入ったポイントがかなり良かったようで、餌を入れるとカショーハや大型のピラニアが入れ食い状態となった。
「ナマズ来いよ! ナマズ!」
そう言っていると、サブの竿に強烈な当たりが来た。これはデカそうだとカメラを構えスタンバイをする。しかし、合わせた瞬間にワイヤーリーダーがブチ切れてしまった。
「うあああああああああ! やってしまった!!」
うなだれるサブ。今回の釣行中、このような断裂による逃がしが何度かあった。僕等は50kgのワイヤーを使っていたのだが、90kgはあってもいいようだ。結局、釣れるまでにピラニアやカショーハによる牙魚のダメージもさることながら、ピライーバの歯も結構ザラつきが激しく、そこにワイヤーが触ると一瞬のパワーで切れてしまうのだ。
マークに指摘され、僕もついでに90kgワイヤーに変更した。その後は一向に当りもなく、時間だけが過ぎる。「ポイントをそろそろ変えようか」とラインを回収していると、いきなりラインが走り出す。上がってきたのは1メートルをゆうに超える良型のスルビンだった。
その後、これといった当たりも無く、チビイーバとスルビンも釣れたし、今日は早めに終わって明日の帰り支度でもしようと思い始めていた。
マーク「そう言えばお前らは今回、何を釣ったんだ?」
僕「ピライーバとレッドテールとか」
マーク「ピラルクは? アイマラは? ジャウーは?」
僕「ピラルクは僕以外が皆釣ったよ。他の人に権利をプレゼントしたから釣ってないんだ」
マーク「帰り道に大きなジャウーが釣れたポイントがあるけど行くか?」
そう聞かれ僕らは即答で「行く!!」と言うと、ボートはエンジンを掛けて発進した。
マーク「その場所では、デカいジャウーが釣れたんだ。ピライーバが釣れたことはあまり無いポイントだな。」
アマゾン4大ナマズをコンプリートしてやりますよ。川の真ん中にアンカーを落とし、流れのあるところに餌をぶっこみ、待った。餌を投入し、4~5分だろうか、ラインが勢い良く出る。間違いなく今日一番の獲物だとすぐにわかった。ドラグを絞めると重量感のある引きがロッドに乗った。
「ジャウーか? 巨大ジャウーが来たか!」
マークも「ジャウー」とか言っているので、ジャウー確定間違いなし!
しばらくファイトを続けているとマークが「ラウラウ・・・・」とボソッと呟いた。このポイントはジャウーじゃなかったのか? ラウラウなのか? ラウラウ来ちゃうのか?
だんだんと雲行きも怪しくなり、冷たい風が辺りを吹き抜ける。そして10分の格闘の末、浮上してきたのはラウラウ!
「来たー! ハットトリックきたー!!」
めっちゃ吠えた。そして釣り上げたタイミングで大雨が僕らを襲う。
最後の最後でピライーバ。写真も雨上がりで非常に雰囲気が出ていてカッコいい。マークも本当にうれしそうだ。
「ありがとう」とお礼を言いながら放してやるとピライーバはゆっくりと泳いで姿を消した。
しばらく川を見つめ、これで本当に終わったんだと実感した。まさかこの釣行で5本も獲れるとは思わなかった。感無量と言うのは、こういう時に使うのかもしれない。本当にやり切ったよ。
またいつか、この場所に戻ってくることがあれば――。