奄美大島固有種を求めて 712.35 ㎞²、5日間の激走
奄美大島固有種を求めて 712.35 ㎞²、5日間の激走
★初めまして両生類天国奄美大島!
2016年4月6日14時45分、わたしを乗せたJAL659便は奄美大島空港に着陸した。
今回の旅の目的は、奄美大島の固有種を中心とした、生物全般を探し観察を行うこと。また、時間の許す限り釣りを楽しむことである。奄美大島空港に降りたち、この島の風と光を体いっぱいに感じた時は、まさかこれほど激しく過酷な旅になろうとは想像もしていなかった。
今回レンタカーと宿をお世話になるドミトリー改め『奄美ゲストハウス涼風』の美人女将が笑顔で迎えてくれた。簡単な身支度を済ませ、早速旅の始まりとしよう。この5日間、私と一緒に野山を駆け回る相棒 “パジェロミニ” に颯爽と乗り込んだ。
この渡航前に、ある峠があるエリアに両生類が豊富に生息しているという情報を仕入れておいた。
一先ず、そこへ向かうことにしよう。
峠に向かう途中、畑や水路、大小さまざま川を覗きながら移動する。十中八九、不審者に見える事は言うまでもない。
10分程徘徊を続けた頃、心に留まる小さな水路を発見。慌てて水路に駆け寄り、そっと覗き込んでみた………おっ??おぉぉっ!見つけたぁー!!
今回の目標の1つである、両生類有尾目アマミシリケンイモリと出会った。ここはまさに、アマミシリケンイモリの楽園である。わずか5mほどの流れの中に、20匹以上の個体が浮遊しているのであった。
アマミシリケンイモリ:奄美諸島に生息する陸生傾向が強いイモリ。尾の形が剣にに似ていることから尻剣(シリケン)と名付けられた。
繁殖期:1月下旬~7月
サイズ:110~180mm
観察難易度:★★
この艶やかさ!両生類好きには堪りません。
早速の成果にモチベーションも上がり、再び峠を目指して走り出す。夕方までに峠の麓へたどり着き、山中の滝や渓流に入った。
漆黒の闇に備えて、入念に下見を行うのである。こちらの状況も悪くない。辺り一面が暗くなった頃には、渓流周りに生息するカエルたち出会える予感がプンプンする。
経験上、焦りは禁物。初日ということもあるので本日は終了。残り少ない後ろ髪(私は薄毛である)引かれる思いで、山を下りることとした。
終了とは言ったものの、宿に向かうまでの道のりには、私を誘惑する鳴き声が響き渡っているではないか…私は迷わず車を飛び出した。まずは畑周辺から調査に入った。
河川の辺りから激しく鳴り響くカエルたちの声。アマミアオガエルとハロウェルアマガエルの声だと確信した。私はその声を追いながら駆け出した。
カエル好きが高じて、図鑑やネットで日々カエルの生態を研究していた私。いつの間にかカエルの声で、種を識別できるようになっているではないか…そんな自分に感動する。
自分に酔いしれていると、視界の端に何かを捉えた。
でたぁぁぁっ~!!ヒメハブぅ!!!!!
ヒメハブ
カエルを捕食しようとカエルの産卵場所にはよく現れる。動作が鈍く本種を沖縄では『ニーブヤァー(のろま)』と呼ぶ。
観察難易度:★★★
カエル居るところにヘビあり!ヒメハブも私同様、カエルが好物なのである。いわゆるホンハブよりもずっと小柄だが、噛まれればやはり危険なので注意が必要だ。恐る恐るヒメハブをすり抜け、更に奥を目指した…。
アマミアオガエル 奄美大島のみに生息するアオガエル。アオガエルの中でも大型種。平野から山地の森林などに生息する。
鳴き声:キャラッキャラララ
繁殖期:1~5月
サイズ:45~77㎜
観察難易度:★★
いたぁぁ~!!奄美大島固有種2種目のアマミアオガエルとの出会った!!
アマミアオガエル卵塊(卵)
池や森林の水たまりの周辺に泡状の卵塊を産み付ける。雨などで卵は水に落ち孵化をする。
観察難易度:★★★
続いてアマミアオガエルの卵塊も発見。カエルの鳴き声が響き渡る中、私も嬉しさのあまり
カエルの合唱に加わるかの如く奇声を上げる。キャラッキャラララ~!!!!
ハロウエルアマガエル 馴染み深い二ホンアマガエルに似るが奄美諸島、沖縄諸島にのみ生息するアマガエル。
鳴き声:ギーギーギーギッ
繁殖:3~5月
サイズ: 30~40㎜
観察難易度:★★
リュウキュウカジカガエル 南西諸島に生息するカジカガエル。本州のカジカガエルと違い比較的田んぼ周りなど何処にでも現れる。
鳴き声:リッリッリッリッ
繁殖期:4~9月
サイズ:25~37㎜
観察難易度:★★
ヒメアマガエル 日本最小種といわれるカエル、土の中や葉っぱの下で鳴いているケースが多く個体数は多いが見つけにくい。
鳴き声:ガゥォォォガゥォォォ
繁殖期:3月~5月
サイズ:20㎜~28㎜
観察難易度:★★★
その後3種続けて、ハロウェルアマガエル、リュウキュウカジカガエル、そしてヒメアマガエルを発見。
本日の成果は奄美大島固有種を2種含む5種。初日にして、5種の両生類に遭遇する事は大きな成果である。満たされた私は、相棒に乗り込み、今日の宿を目指した。
今回の生活の拠点を置くことなる宿だが、1泊1800円と格安である。見知らぬ旅人との共同生活ではあるが、情報交換もできるし、寝るだけだと考えれば打って付けの宿である。また、今回の相棒“パジェロミニ”も1日2500円で宿から借りている。
宿で一息入れた後、宿周辺の散策へ出掛けた。近所を流れる川を覗いてみると、あれ?オオウナギ??しかも、大量のウナギがうごめき合っているではないか!!!!
沖縄本島にも生息しているが、年々生息数が減ってきていると聞いている。ここ奄美大島では、まだまだ多くのオオウナギが生息しているようであった。これなら釣りも、容易に楽しめると確信し、今日は休むことにした。
AM1:30に就寝。
★奄美大島2日目 ケイリュウガエルを探せ!そしてオオウナギをぶっこ抜き!!
AM3時30分、携帯電話のアラームが鳴る。
今日は釣りを楽しむ為、カヤックを予約しており、眠気をこらえ約束したマングローブ茶屋を目指し、相棒を走らせた。
本日、不運にもかなりの強風…。何とか出船し川を漕ぎながらポイントを探る。小型のポッパーを、岸側目掛けて隈なくキャストし続ける。強風と下げ潮で苦戦しつつも、なんとか1匹掛けたところで、敢え無く終了…。
このところ釣運が急降下している…。奇跡の1匹を釣り上げボウズを逃れた事にホッとした自分がそこにいた…。恥ずかしながらではあるが、今日のカヤック釣りは“良し”としよう。
コトヒキ
浮き袋を使いグゥグゥと音を立てる。この音が名前の由来『琴弾』となる。関東以南に多く
生息する。
観察難易度:★★★
カヤックを下りた後、再び夜に備えての峠の下見と調査を行った。
やはり、見知らぬ土地の山奥に深夜に入ると、迷う確率が非常に高くなる。入念な下見は、深夜の一人探検隊には欠かせない。
以前、沖縄で一度、石垣島で一度、プチ遭難を経験している。焦りに焦った事は安易に想像が出来ると思う。
圏外になっている携帯画面を見た瞬間、期待と想像通りパニックに陥った…。それ以来、昼間の下見は欠かせないものとなったのだ。
下見の途中、ふと足元を見ると興味深いものを見つけた…。
糞である。
アマミノクロウサギの糞と思われる。この周辺に生息しているということなのか?これは夜間に再度訪れる価値があるであろう。まだ見ぬ相手を想像し、期待で胸がいっぱいになった。
早く日が暮れる事を待ち望み、いったん峠を後にした。日も暮れて、辺りの空気も変化し始めた時、再び山中の渓流へやって来た。山へ入るポイントへ向かう為、車を走らせていると、道路を横断しようと姿を現したのはアマミハナサキガエルである。こんな状況でも愛するカエルを見過ごしはしない。
アマミハナサキガエル 奄美地方に生息するハナサキガエル。体色は茶褐色~緑と色彩に富む
鹿児島県指定天然記念物
環境省絶滅危惧Ⅱ類
鳴き声:ピッピッピヨ
繁殖期:11~5月
サイズ:55~100㎜
観察難易度:★★★
日中からの雨の影響もあり、両生類の活性はかなり良い状態である。この後の探索に、さらに期待が高まる。
車を降り、渓流沿いに川を下って行くことにした。森に響き渡るアマミイシカワガエルの声…。
イシカワガエルは日本一美しいカエルといわれ、又、こちらも鹿児島県指定天然記念物の一つであり、今回の旅で一番出会いたいカエルであった。
声を追いながら渓流の奥へと進んでいく、何度もヒメハブの存在に驚かされながらの細心の注意を払う。随分奥まで進んだと感じた時、イシカワガエルの好むような崖を発見する。
注意深く見てみると…。崖の上方に……いたっ!!!
探し求めていた幻のカレ。
そして日本一美しいといわれるカレ。
私が愛して病まないカレ。
そう、アマミイシカワガエルと出会えたのである。
その後も周辺を隈なく探し続け、6個体を確認して渓流を後にした。
アマミイシカワガエル 2011年に新種とされる。日本一美しいカエルといわれると同時に
森林の奥深くの生息することから幻のカエルともいわれる。
環境省絶滅危惧IB類
鹿児島県指定天然記念物
鳴き声:コォッ
繁殖:1~5月
サイズ:80~137㎜
観察難易度:★★★★★
大興奮が冷めた瞬間の暗闇が一番怖い…毎回そう思う。
目的を達成するまでは、夢と期待にあふれた暗闇が、冷静さを取り戻した時が、漆黒の闇に変わる瞬間でもあるのだ…。実に怖い…。
渓流から車まで帰り道、足元のヒメハブと、正体がわからない何かに怯えながら足を進めていていると、突然暗闇の中から、男性のうめき声が聞こえる…。
『ぐぅ、ぅぅぅっ、 ぅぅぅぅ』
一瞬恐怖のあまり硬直する。しかし冷静になりもう一度耳を澄ませてみる…。これは!もう一つの渓流沿いに生息することが多いカエル、オットンガエルの鳴き声だ!!!
すかさず鳴き声の方へ足を向ける。そこには、堂々とした大型のオットンガエルがいた。
先程まで怯えていた私の姿より、随分と勇ましい姿である。
オットンガエル アカガエル科最大のカエル。非常に大型のカエルで名前の意味『オットン』も大きいという意味。
環境省絶滅危惧IB類
鹿児島県指定天然記念物
鳴き声:グゥゥウゥゥッ
繁殖:4~8月
サイズ100~140㎜
観察難易度:★★★★★
大成果である。初日に引き続き3種の奄美大島の両生類(固有種)を観察することができた。その後、足早に相棒に乗り込み、昼間に糞を確認した近辺へ向かう。そう、アマミノクロウサギの探索の始まりである。
車に乗り、低速で走らせながら峠道を隈なく捜索する。20分ほど走らせただろうか、前方の道路から茂みに逃げ込む黒い影を見た。
『あっ!クロウサギだ!』
思わず叫ぶ。
その後も、数匹のクロウサギを見かけるが、警戒心が強く撮影までは至らない。何度も発見したが、車から降りた瞬間に茂みに逃げ込むのである。
そんな中で、少し小振りのクロウサギだけが逃げずに撮影に応じてくれた。どうも、巣穴から出たばかりの子供の様で、それゆえ警戒心が薄いのだと思う。
本来、アマミノクロウサギは、天敵のマングースやハブから身を守るため、子育ての際、巣穴へ子供を入れた状態で完全に入り口を塞いでしまうらしい。食事を与える時のみ入り口を掘り返し、授乳が終わると再び入口を塞ぐのだ。
また、排泄に関しても視界が開ける道路やあぜ道で行い、茂みの中ではあまり行わないという。それ程警戒心が強いのである。
そんな中で撮影まで至ったのは非常に運が良かったと思える。
アマミノクロウサギ ウサギ科の中でも特に原始的な形態を残した種。
特別天然記念物
環境省絶滅危惧IB類
観察難易度:★★★★★
ここまで順調に、多くの両生類とアマミノクロウサギにまで逢うことができた二日目。本日はこれにて終了と言いたいところであったが、私の気持ちはまだまだ収まらないのであった。何ともしつこい男である…。再び、昨日オオウナギを発見したポイントに車を走らせた。
昨晩と同様そこには5匹ほどのオオウナギを確認することができた。実は昼に行った渓流の下見の際に、大型のミミズを掘り起こしていた。そのミミズを針にかけオオウナギの口元へ落とす。
いとも簡単に喰いついた。
必死に穴に逃げ込もうとするオオウナギを一気に引き抜いた。上がってきたのは70cm程のオオウナギであった。
これで私の心はやっと満足した。今夜は休むこととしよう。
オオウナギ
最大で全長2m・体重20kgに達する。
熱帯性の種であるため、日本の九州以北で目にする機会が少ない。
観察難易度:★★★★
東の空は既にうっすらと明るくなりかけていた…。
★奄美大島3日目 深夜のマングローブの森、泥んこまみれでオキナワアナジャコを捕まえろ!
3日目の朝8時、宿泊所の3段ベッドから這い出すように抜け出し、『じゃりパン』をむさぼる。じゃりパンとは、やわらかいコッペパンに生クリームと砂糖が挟んであり、噛んだ時にジャリジャリという食感がある。安易な名前だが旨い!そしてボリュームがあり1個108円と安い!今回の旅の7割はこのじゃりパンに助けられたのだ。
本日はオキナワアナジャコを捕まえる予定である。その為、昨日お世話になったマングローブ茶屋に情報収集に出掛けた。潮の関係で、今夜は干潮が深夜である事がわかった。
深夜のオキナワアナジャコ捕獲に向けて、マングローブ茶屋さんで出会った親父さんにアナジャコの習性と捕獲方法についてレクチャーを受けた。やはり、夜行性の生物ということで、夜まで待たなければならなかった。
それまでの間、ここで知り合った親父さんと遊ぶことになった。親父さんの秘密のポイントでは巨大オオウナギが釣れるという。早速そこに仕掛けをかけた。また、久しぶりにのんびりと釣りをしながら有意義な時間を過ごしたのであった。ゆっくりと釣りを楽しんでいると、すぐそこの木に動く影を確認した。
また、私の心が大きく揺れるのを感じ、そっと近づいてみると、そこには、なんとも鮮やかな緑色をしたオキナワキノボリトカゲがいた。
すかさず素手でつかまえて弄りまわす。何とも可愛らしい。
しばらく観察を続け、逃がそうかとした瞬間、クネクネと奇妙に動き出し噛みついた。
オキナワキノボリトカゲ
感情によって体色を変えるといわれる。開発による生息地の破壊や、ペット用の乱獲、外来種による食害等により生息数は減少している。
観察難易度:★★★
『うぎゃぁぁ~!!いてぇ!!』
とっさのことに驚き、声を上げた。同時に、これがハブでないことを神に感謝した。
マングローブの森
そんな事をしながら楽しんでいると、あっという間に日が暮れて深夜になった。親父さんに借りた巨大ハケ、懐中電灯2個、カメラを担いで深夜のマングローブの森にわけ入る。
潮は23時の時点でかなり引いていたが、ところどころ泥が溜まっており、かなり泥濘が深い場所もあった。先ずはアナジャコが地中に穴を掘り、泥が蓄積し塚になった所謂ジャコ塚を探した。
マングローブの森をかなり奥に入ったころに、泥の堆積した丘のようなものがいくつも現れた。丘だと思ったこの泥の堆積が、いくつものジャコ塚が連なったものであった。
この中から、比較的新しそうな泥が堆積している塚を探し捕獲開始である。
先ず、アナジャコの入り口から奥を懐中電灯で照らす。しばらく待つと、地中から光を嫌ったアナジャコが穴の入り口を埋めようと上がってくる。その時を狙って、巨大ハケを一気にジャコ塚に差し込み、退路を塞いでしまうという作戦である。
暫くジャコ塚を探っていると、いかにも新しい濡れた泥が堆積している塚を発見した。
直ぐに懐中電灯を設置し、あとは待つばかりである。
オキナワアナジャコが穴を掘り堆積した塚早速懐中電灯で照らす。
1時間ほどたったころだろうか、私の右側に設置した塚から僅かに音がした。覗いてみると穴から赤い爪が出ているではないか!!
興奮のあまり震える手で、巨大ハケを塚に一気に差し込んだ。勢いあまり、塚は一気に崩れ去った。そして、その崩れ去った塚の中から、もそもそと這い出すオキナワアナジャコを捕えた!
『やったぜぇぇぇい!』
マングローブに響く叫び声。
鮮やかな赤、そしてエビともザリガニとも違うその容姿。兎にも角にも恰好良い生き物である。マングローブの森の中、奇声を上げながら小躍りをし歓喜に酔いしれた。
オキナワアナジャコ
2mもの深さの穴に生息しており、活動は夜間に行われる。
マングローブの生態系における生物地球科学的循環にとって重要な生物
観察難易度:★★★★★
ん!?
あまりの興奮で自分の位置と帰る方向を完全に見失った。やばい!と思ったときには後の祭り、
完全に45歳の迷子である。
1時間ほど彷徨い続け、全身泥だらけの体から悪臭が放たれ出した…。もう今日はこの場所に泊まろう…マングローブの森で『夜明けを待とう』とあきらめて冷静になった瞬間、遠くで何かが聞こえる…かすかに聞こえてくる声…そう、遠くの山から聞こえてきているのはアマミアオガエルの鳴き声だ!!!
この鳴き声を追えば、マングローブの森から脱出できる!!そのことに気付き、再び足を進めたのだ。諦めた時から1時間、やっと思いで森を抜けた。たった一匹のオキナワアナジャコをにぎりしめ…生還したのであった…そして私は、カエルに助けられた…。
マングローブ茶屋さんに到着したときは既にAM3:00。親父さんは就寝していた。
一匹のアナジャコをバケツに入れ、借りていたハケと一緒に置いて引き上げた。きっとあのアナジャコは、親父さんが美味しく食べてくれただろう。
★奄美大島4日目 イボイモリを探せ!!
いよいよ活動最終日。5日目は移動もあり、午前中しか活動が出来ないので、実質本日が最終日となる。
一通りの両生類を観察し終わり、本日はイボイモリを捜索することとした。
しかし…。
今迄の好調が嘘だったかのように、まさかの絶不調。山中に入り、いくら岩をひっくり返し、倒木をひっくり返しても出てこない。
アマミサソリモドキ
日本では伊豆諸島の八丈島(人為分布)、九州南部から沖縄にかけてアマミサソリモドキが、八重山諸島にタイワンサソリモドキが分布する。
名前の通りサソリに似た特徴がある。
観察難易度:★★
石の下から出て来るのは、アマミサソリモドキのみであった。夕方までサソリモドキ達と戯れたが、ついに私の心は折れ海に向かった。ついに両生類運も尽きたようだ。
最終日、今回釣りでの結果が芳しくなかったため、有終の美でサメ若しくはエイを釣りあげようと企んだのであった。
用意しておいた冷凍烏賊を1本丸ごと針にかけ、海に投げ込む。直ぐに釣れるであろうと考えていたが、3時間たってもピクリとも竿先は動かない…。
動かない針先を眺めていると、ここ数日の寝不足がたたり、一気に眠気が襲っていた。必死に眠気を振り払おうと、得意の徘徊を始めた。
手を後ろに組み、フラフラと徘徊していると、水面に浮遊している物体が視界に飛び込んできた。見慣れぬプカプカと泳ぐその物体は、ハリセンボンではないか!
本州にも生息する魚で、膨らんだ時の個性的な形状を一目見たくて、釣りたい魚のリストにあった。すかさずキャスト用のロッドに、ジグヘッドとアジング用のワームを着けて口元に落としてみた。
あっ!吸い込んだ!
いとも簡単に釣れた。引き抜いたと同時に釣り針は外れ、一気にハリセンボンは膨らみ針のボールと化した。
堪らず手の上にのせて撮影をおこなうが、これが結構痛い。膨らんだままの状態で海に帰すと、5分ほどプカプカと水面を漂っていた。
するとどうだろう、プシュ~という音と共に縮み、元気に泳いで帰った。
まさかのプシュ~である。
ハリセンボン
奄美大島では「アバス」と呼ばれる。また、棘を皮ごと取り除けば食用にもなる。沖縄では「アバサー」と呼ばれ、「アバサー汁」は沖縄料理の一つにも挙げられる。
観察難易度:★★★
残念ながら、その日はサメもエイも掛けることはできなかったが、このハリセンボンに癒され満足することができた。
★さらば!奄美大島 次回はコクテンフグとイボイモリそしてアマミアカガエルを
最終日、お世話になった宿に別れを告げ、散策しながら空港に向かうことにした。いくつかの池周りを見ながら移動していた時、アマミシリケンイモリの中に一匹だけ別色のイモリを見つけた。
他のイモリとは明らかに異なる。本来であれば背中が黒い個体がほとんどだが、この個体の背中は白とも金色とも言えない色をしていたのだ。
アマミシリケンイモリ(ゴールドカラー)
通常は真っ黒、若しくはオレンジのラインが背中に入る個体が殆どであるが、この個体は背面全体がゴールド(薄茶)であった。
今回の旅で100匹以上のアマミシリケンイモリを観察したが2個体のみこの背面色の個体を発見。
観察難易度:★★★★★
最後に珍しいものを見させていただき、奄美大島の5日間の旅を終えた。
今回逢うことがかなわなかった魅力的な生き物達に、次回、必ず会うことを約束し、JAL658便に足早に乗り込んだ。
現在、奄美大島をはじめ、奄美群島を世界自然遺産に登録へ向けての活動が行われている。これだけの自然が残る奄美群島と、その中の奄美大島、世界自然遺産の登録が実際行われると、観光産業の活性化や、農林水産物のなどの特産品の販売の活性が期待できる。
しかしながら、大きな開発が同時におこなわれ、観光客の急増に伴う自然環境への負荷が危惧される。
この様な人間の一方的なエゴで、自然環境に大きな変化をもたらさないこと、そして、この大自然に生きる小さな生物たちが、今後も逞しく生態系の変化の中で生き抜いていくことを切に願う。