眠れる獅子ならぬ、眠れる『フカ』、ちょっぴりお茶目な沿岸域のハンター
眠れる獅子ならぬ、眠れる『フカ』、ちょっぴりお茶目な沿岸域のハンター
場所は再び小笠原諸島。
これは、『魔王』マダラエイに私が会う前に最初に出会いたかったサメのお話。
初めて小笠原に訪れた年、私が海水浴場で泳いで居た時、2匹のサメに遭遇した。そのサメは私を見るなり、一目散に泳ぎ去る。私もしばらく追いかけたが、姿は遥か遠く海の中に消えてしまった。

それから1年、私は再び小笠原諸島を目指した。
そのサメを釣り上げる為に。

そのサメの名前はネムリブカ。
名前の通り昼間はサンゴや洞穴で泳がずにじっとしているからその名前が付いた。
が、実際昼間でもサンゴ礁を回遊して餌を探していることが多かったりする。
これは個体差によるものか、、、
私は活動が活発になる夕暮れ時から竿を出す事にした。
夜が深まり、海には巨魚の気配が漂う。
眠気と戦いながら、竿を眺めていた、その時だった!
『ジイイイイーーーーーーーー』
リールからハヤテの如き速さで糸が出ていく!!
合わせを入れるとサメ特有の首を振る動作、サンゴに突っ込んでいくパワー!
程なくして上がったのは大本命、ネムリブカであった。
決して大きくはなかったが、サメらしいフォルムに感動した。
ネムリブカは英明ホワイトチップとも呼ばれる。
名前の由来通り一つ目の背びれと第2背びれ、尾ビレに白い模様がある事からこの名前がついた。

写真の通り、各鰭(ヒレ)に白い模様が付く。身体には薄くぶち模様がある。
また、この背鰭の模様には個体差があり、各鰭のどこかは発色しない個体もいるようだ。

このように、第2背鰭と尾鰭下葉が発色しない個体もいる。これは個性なのか?
ネムリブカの顔には、髭が二対生えている。
この髭は、鼻弁と言う。目は特徴的な猫目でネムリブカを象徴する可愛らしい目である。目についているまぶたの様なものは瞬膜と言われ、眼球を保護するのに役立っている。
ネムリブカはメジロザメの仲間だが、泳がなくても呼吸をする事ができる。メジロザメの仲間は泳ぎ続けない限り呼吸ができない。その性質を生かし、昼間は底でゆっくりとしている。まるでナマズのような、あるいは怠け者なサメだったりする。

しかし、サメ特有の微弱な電流を感知し、餌の場所を突き止め、効率よく狩りを行う『ロレンチーニ器官』をしっかりと備え、狩りのスペシャリストであることは間違いない。
表情豊かなサメ!ネムリブカ。
そんなネムリブカは小笠原ではよく出会う事の出来るサメの1匹だ。私はこのサメが大好きだ。サメ自体が好きだが、このサメは愛嬌がある顔からか、かなり表情が豊かだったりする。

サメは強面で通るが、口をパッと開けてハイチーズしてくれるこのサメ、どこか可愛さが漂う。
そんな可愛い、もはやセリフが聞こえてきそうなネムリブカの可愛い写真ギャラリーを見て頂こうと思う。きっとネムリブカを好きになる筈だ。
まずはこれ!
鰭を半開きで、鰭をフリフリ!!
更に!

確かにサメなのに、髭なり猫目なりで可愛くなってしまう。捕まってしまった。。という必死さが伝わってる1枚。
最後は!!
キモイ中年太りのオッさんに抱きしめられ、もはや断末魔を上げたような表情をするネムリブカ。
もはや「このおっさんキモいよ。。」という声が聞こえてきてしまう。
失礼な!私はまだ23歳だ!と反論したくなる。(丁寧に海にお帰り頂きました)
写真を上げまくるとキリがないのでこれで終わりにするが、どこか愛嬌があり表情豊かなネムリブカを皆さん少しでも好きになってくれたら幸いだ。
サメの暗いイメージ
『サメ』というイメージは時に人に対して、嫌悪感や恐怖感を与える場合もある。このネムリブカというサメ、殆ど危険は無いが、危険が0だと言う事はない。水中でネムリブカにちょっかいを出した人が噛まれて針を縫う怪我をしたという事例があるようだ。とはいえ、このサメはダイビングで大人気なサメでもあり、人に対して危害を加える事は殆ど無いのだ。

確かに正真正銘のサメだが、ネムリブカはとても温厚で臆病な魚だ。
海の中は、いわゆる魚達の家だ。サメだって勝手に家に入られて、挙げ句の果てにちょっかいまで出されたら反撃するのは当たり前だろう。
これは自分と置き換えればわかる事だ。サメのほとんどが温厚でなにより臆病すぎるくらいな魚。
危険と呼ばれるサメはほんの一部。自然を相手にする時は、お邪魔します、と謙虚に遊び、自然に気を使って遊ぶべきだ。何でもかんでも自分勝手に捨てたり殺したり、ちょっかいを出す物では無い。無防備なのも良くない。海の中は、他人の家であり、自分の家ではないのだから。

比較的浅いリーフにもよく出没するネムリブカ。
人とは馴染みやすいサメな為、より大切にしたい。ネムリブカは水中でも、最高にかっこよいながら愛嬌も振りまいてくれる存在だ。サメだからなんでも危ない、近寄らないではなく、サメと言う存在に、恐怖感ではなく、興味を持ってくれる人が増えたらとても嬉しい。

そして、この愛おしい魚達にもっと近付いて末永く触れ合って行きたいと私は願っている。