日本最大のゴキブリ「ヤエヤママダラゴキブリ」は意外と愛せる
日本最大のゴキブリ「ヤエヤママダラゴキブリ」は意外と愛せる
※閲覧注意! : 本記事の主役はゴキブリです。彼らの写真(接写)がたくさん登場します。苦手な方は閲覧されないことをおすすめします。
おそらくこの世で一番嫌われている動物はゴキブリだろう。
実はこんな記事を書いている僕自身も台所に出てくるあいつらのことが大の苦手である。
…チャバネはまだいい。問題は大きい連中。
クロゴキブリとかワモンゴキブリとか、屋内に出没していいレベルを超えた図体をしているやつらである。
でけえんだよ…。クワガタとかセミとかに張り合えそうなダイナマイトボディーでこっちのパーソナルスペースに入ってくるんじゃねえよ…。と思う次第です。
というわけで、我々がゴキブリを「キモい!怖い!嫌い!」と感じてしまう理由の一つにそのサイズがあるのは明らか。
…でも、あの見慣れた(くはないんだが)黒いゴキブリよりもずっと大きなゴキブリ、日本一大きなゴキブリが沖縄県八重山諸島に分布しているという。
日本一!!怖いもの見たさというか、そこまでいったらもう逆に怖くないんじゃないか?という興味が湧いたので、石垣島へゴキブリを探しに行ってみた。
でっかい節足動物の宝庫・石垣島
青い海には目もくれず、巨大ゴキブリを求めて石垣島に広がる森林地帯へ。
ゴキブリだけでなく、八重山諸島というのはやたらとデカい節足動物が多産する地である。
たとえばサキシマヒラタクワガタは国内最大級のクワガタだし、日本最大といえば島のあちこちに巣を張っているオオジョロウグモもそう。
コゲチャトゲフチオオウスバカミキリもちょっとびっくりするぐらいボリューミーだ。極めつけのヤシガニにいたっては世界最大の陸棲節足動物である。
とくれば、日本一のゴキブリがいたってなんの不思議もない。
地上最大の節足動物、ヤシガニ。
薄暗い林道を歩いていると、シダの葉の上にたたずむ大きな影が。
いた。日本最大のゴキブリことヤエヤママダラゴキブリ(Rhabdoblatta yayeyamana)だ。
ヤエヤママダラゴキブリは基本的に夜行性だが、日中もなぜかこうして植物の葉の上に乗っている姿をしばしば目撃する。地表や倒木の下で休まないのは天敵のサソリモドキを避けるためか。
オオゴキブリやマダガスカルオオゴキブリのような大型ゴキブリにありがちなずんぐりむっくりしたシルエットではなく「デカいゴキブリだなぁ」とすぐさま認識できる程度にはゴキブリらしい姿。
しかし、不思議と不快感はない。むしろ「かっこいい虫」「キレイな虫」という印象が勝ち、自然と手が伸びてしまった(※個人の感想です)。
身体の縁はべっ甲のように透き通っている。ああ、カラーリングも不快さを決定する大きな要素なんだな。これなら触れる。※ライター個人の感想です
さすがゴキブリ。やはりかなりすばしっこい。
ようやく両手に包み込むと、手の中でガサガサと暴れまわっているのが伝わってくる。かなりパワフルだ。
しかし、ゴキブリが苦手なはずの僕がここまで大胆になれるとは…。やはり屋内性のものとは何かが違う。雰囲気、としか言いようがないが。
百円硬貨と比べるとこんなサイズ感。撮影中、ずっと触覚を舐めて手入れしていた。女子力高めでかわいい。愛せる気がしてきた。※個人の感想です
裏返すとやっぱりゴキブリ…ではあるけれど、お腹が大きくて丸っこく、かつカラーリングがマイルドなのであまり不快感はない。あと、顔つきがかわいい。※個人の感想です。
基本的に夜行性 幼虫は水にも潜れる
その夜、日中に観察したポイントを再訪すると驚くほど多数のヤエヤママダラゴキブリが活動していた。
樹皮に貼りついている個体が多いが、地面を這っている(駆け抜けている)ものや岩の裂け目からこちらを伺っているものもあった。
エサを食べている個体も観察できた。見れば見るほど、どの個体も仕草がかわいい。
…屋内に出るゴキブリも、しっかりと向き合って観察すればこんな具合に愛せるようになるのかもしれない。次に遭遇したらすぐに殺したりせず、まずは対話を試みてみようと思う。そのあと必ず殺す。
石の裂け目にいた個体。活発になる夜間はかなり警戒心が強く、ライトで照らすとすぐに逃げ出す。あはは、待て待て〜!
深夜、樹上でしおれたクワズイモの葉を一心不乱に食べる個体。この子を撮影する頃には連れて帰って飼育することまで考えてました(断念したけど)。
ちなみに、このゴキブリは沢沿いに多い。
これは幼虫が水辺で暮らすためである。
ヤエヤママダラゴキブリの幼虫。やはり沢に転がる石の下にいた。
なおヤエヤママダラゴキブリの幼虫は水陸両棲で、水中へ潜るという珍しい生態を持つことでも知られている。
次に八重山を訪れた際はゴキブリダイビングの決定的瞬間をカメラに収めたいものだ。