ギャングフィッシュ in ニューヨーク旅。父子でチェインピケレルを釣る!
ギャングフィッシュ in ニューヨーク旅。父子でチェインピケレルを釣る!
今回はちょっと回想。
2009年のことだから、8年前の記憶をたどることになる。
「歩けるうちに、海外移住をした従兄弟と会っておきたいんだ。つきあってくれないか」と頼まれ、当時79歳の父(故人)と出かけたニューヨーク旅。
そこで1日だけ楽しんだ釣りのこと、魚のことを書いてみたい。
アメリカ~な背景を前に父。
父は僕にとって、絵と釣りを教えてくれた師匠でもある。
僕はその2つを軸に仕事をさせてもらっているので、この旅は恩返しの旅でもあった。
昆虫のことも父に教わった。こどもの頃、寝る前に図鑑を見せてリクエストすると朝までに絵を描いておいてくれた。
8年前の僕。これはアメリカ自然史博物館で撮った1枚。恐竜の化石の展示もいっぱいで、動物好きとしてはたまらない施設だった。
タイトルにギャングフィッシュなんて書いたので、ハーレムにある水路かなにかでヒップホップのサウンドをバックにしたアーバンフィッシング?なんて想像した人もいるかもしれない。
けれど、そんなイメージとは全くかけ離れたのんびりとした風景の中、僕らはユルユルと釣りを楽しんだのだ。
正確に言うとニューヨークのとなり、ハドソン川を渡ってすぐのニュージャージー州にある湖が舞台だったのだけれどね。
マンハッタンから1時間の湖で
2009年10月3日。
行ってきたのはニュージャージー州最大の湖であるホパコン湖(Lake Hopatcong)。
周囲は約42キロ。ちなみに河口湖は約20キロだ。
僕らが宿泊していたマンハッタンからは1時間ほどのドライブで到着の、美しく静かな湖だった。
この画像は帰り道のものなのだが、マンハッタン~ホパコン湖間で走ったハイウエイ。
湖のまわりには、こうした豪邸や別荘がいくつも立ち並んでいた。ボートの係留された桟橋まわりは、魚が潜む絶好のフィッシングポイント!
旅の前に、僕は年老いた父と、どんな釣りが楽しめるかなといろいろ考えた。
調べてみると、自由の女神をながめながらの海釣りもできるし、アメリカでのフライフィッシングの発祥地はニューヨーク州にあった。
あれこれ悩んだ末に決めたのが、ニューヨーク在住の日本人ガイドといっしょにラージマウスバス(Micropterus salmoides)やスモールマウスバス(Micropterus dolomieu)の釣りを楽しむというプランだった。
左でパンを頬張るのが日本人ガイドのカズさん。10歳で渡米。カレッジ時代にバス釣りを始め、地元のトーナメントでは数回の優勝もしている。ニューヨーク州公認のフィッシングガイド。※カズさんのブログ
チェインピケレルが釣りたい!
・バス釣りなら父も経験がある。
・ボートなので足腰の弱った父も座って釣りができる。
・マンハッタンの宿までガイドが送迎してくれる。
そういったこともポイントであったが、バス以外にもニジマス(Oncorhynchus mykiss)、イエローパーチ(Perca flavescens)、ウォールアイ(Sander vitreus)…と棲息魚種の豊富な湖であり、バス釣りをしているとチェインピケレル(Esox niger)という魚も混じってくるということが大きな決め手となった。
このチェインピケレルという魚、実は僕にとって最愛の釣りターゲットであるノーザンパイク(Esox lucius 以下パイク)の仲間であり、アメリカに行くことがあれば釣ってみたいなと前から思っていたのだ。
※参照:アイルランド釣り旅紀行 ~古城をバックにパイク釣り~
パイクと同じく小魚やカエルなどを襲い、捕食するギャングフィッシュ。
その名は、体に広がる鎖模様からきているのだが、それもなんだか不良っぽい感じ、全身タトゥーみたいでギャングっぽいではないですか。
ただ、サイズとしては大きくなっても80cm程度とメーターオーバーに成長するパイクやマスキー(Esox masquinongy 。この魚もホパコン湖に棲息するが仕掛けが大がかりになるので狙わなかった)に比べ中途半端で釣魚としても地味キャラ。
ギャングというよりはチンピラかな~。
勝手に重ねたイメージは、なんとなく’70年代刑事ドラマに出てきそうな、ワルぶっているけどホントのワルにはなりきれない実は臆病者。
まじめでやさしい妹がいて、「お兄ちゃん、もうケンカはしないで!!」なんて言われていそう(笑)。
パイクの仲間、関係イメージ。あはっ、いい加減まじめな釣りの話に戻しましょう。
そのチェインピケレルだが、本命ターゲットであるラージ&スモールマウスバスよりもよく釣れた!
はじめに入ったポイントで、すぐにカズさんが、そして僕も続けて釣り、次の移動では父がこの魚としては大物級の70cm級を釣り上げた。
苦笑いのカズさん。それほどこの魚が好きではないのかな!?
僕の釣った40cmくらいのチェインピケレル。水草の陰に潜んでいた。
ヨボヨボ~な釣りをしていたけれどでっかいのを釣っちゃった父。
「世界には面白い魚がいるねぇ」と、さらにピケレルを釣った父がつぶやく。
歯は鋭くギザギザであるが顔はなんだかアヒルのよう。恐ろしいんだかお笑いなんだか、どちらともつかないようなヘンテコな顔つきのこの魚を、スローな竿さばきながらもポコポコと釣り上げていく父の姿が可笑しかった。
「それにしても珍しいなぁ。こんなにピケレルが続くなんて…」と首を傾げながらカズさん。
半日やって釣れたバスは、僕とカズさんに小ぶりのラージマウスが1匹ずつだけで、あとは全てピケレルだった。
バス釣りのプロフェッショナルガイドとしては、やっぱりゲストにいいバスを出してもらいたいという気持ちが強くあるに違いない。
ピケレルが釣りたかった僕としては、結構楽しい半日に感じていたけれど、そうだよね、本場のバスのいいサイズも見たいし、できれば父に釣ってもらいたい!!
僕が釣ったラージマウスバス。北米原産ということで、小さいかったけれどうれしい本場モノ。
ランチをとり、秋風で冷えた体をコーヒーで温めたあと、僕らは後半戦に臨んだ。
さぁ、ピケレルもまだまだ釣りたいけれど、バスも出ておいでよ!
湖畔のレストハウス(ルアーやエサも販売している)に下がっていたウッド製の看板。いい味出しているね。
ブレイクのあと、ふたたびカズさんのバスボートに乗って後半戦へ。
出たっ、ミラクル☆バス!!
午後になってパラパラと小雨が降ってきたので、父にレインウェアを着せた。
80歳に近い父。雨の中での釣りはキツいかなと心配したが、「だいじょうぶ。ノープロブレム!」と答えるのでそのまま釣りを続行した。
もともと英会話の好きな父であったが、会話の中に英語が入ってくるときは機嫌がいいときだ。
「今日の釣りを楽しんでくれているんだなぁ」と感じた僕は、どうか父にいいバスが出ますようにと、湖に向けて念を送った。
「ここはラージだけでなく、スモールマウスも出ますよ」とカズさんに案内された場所には、少し離れたところにミニトーナメントに参戦中らしきボートの姿も見えた。
きっと実績のあるポイントなのだろう。
そして、ここでとんでもなくうれしいドラマが起こることに!
僕の念が通じたのかどうかはわからないが、
父の投げたルアーに、ピケレルではなくバスがヒットしたのだ!
それも大きな!!
「うっ、おっ…!」うなるような声を上げ、魚とのやり取りをしていた父。
ナイスサイズのスモールマウスバスだった。
「この魚はなんだ~?」キョトンとしながらポーズをとる父。
「これが本場のスモールマウスバス。しかもなかなか釣れないナイスサイズだよ!」と僕の方が興奮してしまった!!
「少し疲れたな」と言いつつもキャストを繰り返していた父に、湖が、釣りの神様が、素晴らしい魚をプレゼントしてくれた…。
このあと、カズさんが良型ラージマウスバスを釣り、僕がピケレルを数匹追加。
なんだかそれぞれの好みに合わせてくれたようなヒットが続き、釣り終了となった。
僕は連続でこのサイズのピケレル。大物は全部父に持っていかれたが、まぁ、いっか。
カズさんの釣ったラージマウスバス。この時は本当に楽しいガイドをありがとうございました!
メモリアルなスモールマウスのあとで…。父のラストフィッシュ!!
それでは最後に、この旅で写したニューヨークのスナップをいくつかお見せして終わりにしたい。
大人になると、照れくさかったり、いろんな事情で親と遊ぶなんてことも少なくなってくるけれど、釣りや動物のことを教えてくれた父親や母親がいたりしたら、こどもの頃を思い出し、いまいちどいっしょに時間を過ごしてみるのも楽しいと思う。
あらためて教わるものや、刺激もあるし、自分が今ここにあるのはこの人のおかげなんだという実感も得られるはずだ。
んでもって、子育て真っ最中の僕は、父がそうしてくれたように、自分の娘にも釣りのこと、自然のこと、動物のことなどを、できる限り伝えてあげたいなと思うのだ。
物価の高いニューヨーク。食事はそこそこの値段でハズレの危険もない韓国料理をよく食べた。
パンケーキのほか、サンドイッチ、ハンバーガー、店によっては寿司まであった。
デリで隣の席にいたポリスマン。写真はOKか?と聞くとおどけてくれた。
エンパイアステートビルからの展望。
フリーマーケットでは古いアウトドア雑誌を見つけ、おみやげにした。
タイムズスクエアの歩行者天国で。晴れて気持ち良かったな。
セントラルパークは故ジョン・レノンの記念碑のある広場、ストロベリーフィールズ。
ホテル前で一服する父。お疲れさま!!