スケトウダラのキャスティングゲーム (アメリカ・アラスカ州)
スケトウダラのキャスティングゲーム (アメリカ・アラスカ州)
日本だとどうしても沖釣りの対象魚となってしまうスケトウダラ(Theragra chalcogramma)。
そんなスケトウダラもアラスカのとある場所だと、なんとビーチからお気軽に釣り上げることができる。
アンカレッジから南西へ約230マイル、キーナイから車で約1時間半の距離にあるホーマーの地である。
そう、オフショアでのハリバット釣りで有名な港町だ。釣りとは関係ないところではシンガーのJewelもここ、ホーマー出身だ。
ハリバットの港町として世界的に有名だが、地元ではキングサーモン(マスノスケ)やシルバーサーモン(ギンザケ)も釣れることで有名なDudiak Lagoon、またの名を “The Fishing Hole” があるのも、ここだ。
“The Fishing Hole” の詳細な説明はここでは割愛するが、その管理釣り場のようなラグーンはカチェマックベイと水道で繋がっており、上げ潮のタイミングで入り込むサーモンをお手軽に狙えるとあってハイシーズンには両隣の釣り人の肩が触れそうなほどの満員御礼状態となる。
アラスカと言えども、こと川でのサーモン釣りに限って言えば、そんな状況はいささか珍しくもなく、釣れるポイントがはっきりしている釣り場では良く見られる光景だ。
そういった状況を現地では ”Combat Fishing” と言い表すが、正に言い得て妙だ。
さて、そのスケトウダラ釣り。地元釣り人達の釣り方はニシン餌でのブッコミ釣りがメインのようだ。
ルアーを用いた釣りが好きな自分はラインの先にスプーンを結んで釣り始める。
アラスカに限らず、ゲームフィッシング先進国ではレギュレーションが細かく複雑なので、あらかじめ無難なシングルフックに取り換えているものを使用する。余計なトラブルを避けるためだ。
さっそく何度かバイトがあるもののヒット後のバレが多い。
うん?口切れしているのか?
ドラグを少し緩めて再開。
「ググ!」
最初の一尾ということで、慎重にランディング。
上がってきたのは現地名Pollock、日本で言うところのいわゆるスケトウダラ。狙い通りだ。
想像だにしてなかったアラスカでのキャスティングゲームでのタラ釣り。
引き味はボラに近い感じだが、釣り方、ポイントさえ分かりさえすれば、65cm前後の魚が入れ食いになるのだから、ライトタックルで遊ぶのにはうってつけの対象魚。面白い。
潮位が上がってきてポイントまでの距離が遠くなればなるほど、飛距離に優位性のあるルアー釣りの独壇場となる。
スプーンからジグに変えて、ポイントに入りさえすればまたガツガツとラインを伝わってくる確かな生命感がそこにある。
1キャスト1バイト。
ふむ、一体どれだけのタラがこの辺りに生息しているのだろうか。
バイト数からポイント周辺の海中を想像すると、その海中の様子に興味は湧けどもさすがに氷河の雪解け水を抱くその海域では入水することすらはばかられる。
釣りというごくごく限られた切り口から見ただけでも、ここアラスカでは海で釣りをする度にその豊穣さ、スケールの大きさに驚かされる。離れた場所でエサ釣りをしていた友人は60cmオーバーの立派なカジカを釣り上げていた。
その他、カレイなんかもこの場所で釣れるという。
眼前のモノクロの世界にふと我に返り、時間を確認すると時計の針は22時を指していた。
今日、ここで一体何匹のスケトウダラを釣っては逃がしといったことを繰り返していたのだろう。
アラスカの夏は容易に忘我の境に迷い込んでしまい、気が付けば遊び耽ってしまっている自分がそこにいる。
背後に迫りくる冬に煽られてか、はたまた寂しさからの逃亡か。アラスカの夏は遊ぶのに本当に忙しく、そして、その時間は濃密だ。