フィリピン・ルソン島 淡水魚探索の旅
フィリピン・ルソン島 淡水魚探索の旅
東南アジアに浮かぶ大小複数の島で形成されるフィリピン共和国の最も大きい島、ルソン島へ釣りをしに行くことになった。
ただし、具体的な目標は未定だ。
実を言うと、そもそもルソンという土地にどんな魚が生息しているかも良くわからない状態なのだ。
「なんとなくおもしろそうだから」
そんないい加減ななりゆきで、渡航が決まってしまったのだ。
安い!早い!これで釣れれば言うことなし!
渡航のタイミングは日本、フィリピンが共に台風シーズンのど真ん中に当たってしまう9月下旬。
今回、渡航するにあたり航空券の手配が5日前とえらく遅かった。
しかし、意外にも成田・マニラ間の直航便チケットは3万円台半ばと非常にリーズナブルだった。
それどころか、時々開催されるLCCのセール期間を狙えば往復航空券が1万円前後から買えてしまうそうだ。さすがに驚きだった。
日本との時差はマイナス1時間。フライトタイムはたったの4時間30分。アクセスが容易なのはありがたい。ニノイ・アキノ空港。到着したらまずは、日本円をペソに両替。んー、とりあえず街までの移動費分だけ両替して、残りは街中で行うのがベストかなぁ。最高紙幣は1000ペソで、日本円にして2000円弱くらいの価値。
近代的な高層ビル群。近年、急速な経済成長を続けるこの大都市マニラ首都圏には、多くの日系企業も進出し多様なビジネスで賑わう。もちろん、物価も上昇傾向にある。
交通事情は…。マニラ首都圏の渋滞は想像を超えていた。特に朝夕の通勤ラッシュはヒドい…。
魚市場は海産魚だらけ
さっそく、マニラ近郊の市場へ行ってみる。釣りを始める前に、この国にはどんな魚がいるのか調査してみよう。
周囲を海で囲まれたフィリピンの市場には必然と海産物が多く並ぶ。
日本で良く見るヒラメ(Paralichthys olivaceus)にそっくりな魚。しかし、左向きと右向きの個体が混在している、大きく裂けた口には鋭い歯が並び、かなり凶悪な面構え。
ノコギリガザミ類も
ヤシガニ(Birgus latro)も
食用なのか?それとも観賞用なのか?Wart Snakeと呼ばれていた水蛇の一種。淡水と海水の両方で生息できるんだとか。
しかし、よく見ると外来種と思われる淡水魚もチラホラ。これはティラピアの一種だろう。
7~10月は雨季にあたり、今回訪れた9月はまさに雨季の只中。毎日、シトシトと雨が降った。
首都マニラ界隈に大規模水害をもたらすのも雨季と台風が重なる7~10月の時期。同行者の植木氏が過去に遭遇した洪水の様子。
過去に植木さんの身に起きた出来事。朝起きると屋根が吹き飛んでいたとか……。
いざフィールドへ!フィリピン最大、アジアで3番目に広大なラグナ湖へ。
マニラ中心部から南下すること1時間程で目的地であるラグナ湖に到着した。
目の前に無限に広がるこの湖はアジアで3番目、フィリピンでは1番の面積を誇る。
一部の掘削した箇所を除けば、水深の大半が3m程のちょっと変わった湖。
マニラ首都圏からの汚水が流れ込むためか?水質は良いとは言えないがこれも異国の地ならでは。
岸沿いにはガス銃を持った漁師が水面近くを泳ぐテラピアを狙う。
野鳥や水ヘビを狙う漁師も。
ラグナ湖の湖上へ。
湖上には無数の養殖イケスが設置されている。
養殖イケスを管理する見張り小屋
水深の浅いラグナ湖ではミルクフッシュと言われる魚の養殖が盛んに行われているむやみに近づいたりするとリアルに発砲されるので要注意。ラグナ湖から程近い魚市場。メコンオオナマズ (Pangasianodon gigas)の姿も。
フィリピンで最も良く食されるミルクフッシュ (Chanos chanos)最大で1mを超えるとのこと。
市場内の水槽で飼われていたスポッテッドナイフフィッシュ (Chitala ornata)。近年ラグナ湖で異常に繁殖し、養殖イケスの中に侵入してエビやミルクフィッシュの食い荒らしているらしい。そのため、ここでは害魚扱いされてしまっている。
ルソン島内を大きく移動し首都マニラから車で2時間程の距離にあるパンパンガ州パンパンガ川に来てみた。
村の少年に話しかけ、一緒に釣りをさせてもらうことに。なんでも、ミミズをエサにして大きなオニテナガエビが釣れるんだとか。
近くにもっと良い場所があると案内された所はグチャグチャのベチャベチャ。
大好物のオニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)が居るとわかれば、一段と張り切る同行者の植木氏。見事良型のメスを釣って見せた。
猛暑日の中、最年少の同行者である八尾くんにもメスのオニテナガエビが。
ギベリオブナ(Carassius gibelio)らしき魚まで顔を出し、終わってみればマズマズの釣果。
この村は実にのどかだ。子供たちは、日本で言うメンコらしき物で地べたに転がりながら遊んでいる。
一方。村のヤングたちは、闘鶏に夢中だ。
勝ち負けのルールはよくわからなかった。しかし、真剣勝負の大試合を行う際には鶏の左足にカミソリを装着してデスマッチスタイルで決着をつけるという。恐ろしい。
村内の民家で飼われていたスッポン。
タウナギ(Monopterus albus)すぐ近くの沼地に行けば、いくらでも獲れると教えられた。
フィリピン風に甘辛く味付けされたタウナギは絶品。ビールがすすむ。
あてのない旅はまだまだ続く。今度はヌエバエシハの野池にやってきた。この池は周囲を密林で覆われていた。
ふと、足元を覗くとヒキガエルの一種が鎮座している。刺激を受けると、耳腺やイボから乳白色の毒物を分泌する。フィリピンではポイズンフロッグと呼ばれていて、犬が食べると死に至ることもあるとか。
日陰で休憩中、涼を求めてミズオオトカゲ (Varanus salvator)の子どももやってきた。
良い感じにハスで覆われたエリア。スネークヘッドの一種(Channa striata)がルアーへ好反応をみせる。
サイズは小さいものの、勢いよく飛び出してきてくれるので釣りとしてはなかなか楽しい。
同行してくれた白田氏にも!
現地の釣り人が所有するボートを使わせてもらい、水上へ。
縦に3本の黒いラインの入った南米原産のピーコックバスの一種。Cichla temensisのように思えるが?
現地で知り合ったフィリピン人のアドバイスに従ってみると、あっさり釣れてしまう。頭にコブをもつオスのピーコックバス。種名は不明。
現地の釣り人パウロさん。写真のピーコックバスは最近この池で釣られたもの。こうした大型個体も稀に見られるようだ。
こちらはミコさん。この立派なジャイアントスネークヘッド(Channa Micropeltes)は昨日、近くのダムで釣りあげたとのこと。
そして、ミコさんはかなりのヘビ好き。ルソン島界隈で自分自身で捕獲して飼育している固有種をいくつか見せてもらうことができた。
興味深い情報が次々と!
アルコール効果もあってか、彼らとの会話の中は途切れることなく弾み続けた。
そして、その中には「とある島には〇〇アロワナが生息している」だとか、「あの川には巨大ナマズが棲んでる」だとか。興味を引かれる魚種の話題もいくつか登場した。
僕の想像を超える内容だった。
そんな興味深い釣果の一部を写真で紹介しよう。
…ね?すごいのいっぱい釣れてるでしょ?
でも今回の旅に関して言えば、その釣果は散々なものだった。
僕の経験してきた海外釣行の中でも過去最低の超貧果。「フィリピン、全然釣れねーな…。」というのが本音。
しかし、今後へ繋がる情報はたくさん得ることができたし、旅の中でいつのまにか信頼できる現地の仲間も増えた。
可能性に満ちた土地であることは間違いない。
また今すぐにでもフィリピンへ飛び立ちたい気持ちでいっぱいだ。
エピローグ:次回のターゲットは「淡水に棲む〇〇」!
ところで、この画像を見てほしい。フィリピンで現在流通している50ペソ紙幣の裏面である。
ロウニンアジ(Caranx ignobilis)、いわゆるジャイアントトレバリー(GT)らしき魚が描かれている。…だが、実はこのトレバリー、フィリピン国内のある湖に生息している特殊な個体群なのだという。
淡水の湖にGT!?
…フィリピンでの最終目標はどうやら“レイクGT”という前代未聞の大捕物になりそうだ。