世にも不思議な「エンジェルシャーク」 カスザメという魚
世にも不思議な「エンジェルシャーク」 カスザメという魚
“Angel shark”
すなわち天使のサメなる名を持つ魚がいる。
日本では「カスザメ(Squatina japonica)」という天使とはかけ離れた印象の名で呼ばれる軟骨魚類である。
サメと名はつくが、その姿は一般的にイメージされるサメとは大きくかけ離れたものである。
なんとも不可思議な魚なのだ。
今回はこの異様で奇怪な「天使」の特徴と魅力を紹介したい。
カスザメとは極端に縦扁した幅の広い魚体は、サメよりもむしろエイに近い印象を受ける。
カスザメ科カスザメ属に分類される魚類で、北西太平洋に分布。
サメにしては珍しく砂泥底で待ち伏せ型の捕食を行うことで知られる。
極めて瞬発力に優れており、自身の周囲を通りがかる小魚や甲殻類を目にも止まらないスピードで丸飲みにする。
こうした捕食様式や、砂に潜る習性、砂底に溶け込みやすい体色も含め、コチ類に近い印象を受ける。
ただし、鰓はちゃんと体側に開いている。まぎれもなくサメである(エイの鰓は腹側に位置する)。
どのへんが「エンジェル」?
エンジェルというよりは、むしろデビルっぽい見た目だが…
先述のとおり、この魚の英名は「エンジェルシャーク」である。
ぱっと見たところ、褐色の平たい魚体は天使のイメージとは結び付かない。
しかし、裏返して腹側から眺めてみると…。
真っ白な姿はたしかに翼を生やした天使のよう…に見えないこともない。
また、シルエットが司祭服を着た人にも見えることから海の司教・ビショップフィッシュの名で呼ばれることもある。魚類とは思えぬ特異な容姿。
鼻先にはヒゲ状の皮弁が。
口が腹寄りに開くものが多いサメ類において、カスザメは例外的に真正面へ開口する。頭上の獲物を捕捉するために得た形質だろう。
明るい場所では瞳が猫のように細くなる。
利用・・・食べてよし、おろしてよし!
カスザメはサメ類の中でもっとも美味な種とも言われ、底引き網などで偶発的に捕獲された個体は市場に並ぶこともある。
また皮はいわゆる鮫肌で、ワサビ用のおろし金に加工して利用される。
肉には軟骨魚類特有のアンモニア臭が少なく、とても美味しい。
体表は粗い鮫肌。質の高いおろし金の材料として珍重されるとか。
捕獲方法・・・ルアーフィッシング
カスザメは待ち伏せ型の捕食者であり、動くエサに敏感に反応するため、個人が捕獲を試みる場合はルアーフィッシングがもっとも効率的である。
基本的に沖の深場に散らばって生息しており、狙って釣り上げるのは難しい魚である。
しかし、初夏と真冬の二度にわたって集団で砂泥底の沿岸部へ接岸するので、そのタイミングを見計らえば砂浜やそこに隣接する漁港などで釣獲することができる。