イノシシよりもおいしい? 隠れた人気ジビエ「アナグマ」の味とは
イノシシよりもおいしい? 隠れた人気ジビエ「アナグマ」の味とは
近年、「ジビエ」という言葉をよく耳にするようになった。狩猟によって得られた鳥獣あるいはその肉を指す、フランス語である。
いずれも家畜の肉には無い、独特の野趣あふれる味を秘めているため、ハンターたのみならず一般の美食家からも広く注目を集めているのだ。
ところで、ジビエの代表的な獣といえば猪、鹿などであるが、さらにその上を行くと言われる隠れた人気ジビエが存在する。
アナグマである。
畑のそばに設置されたかご罠にかかったアナグマ
そしてこの冬、近所に住む漁師がかご罠でこのアナグマを獲った。
解体を見学させてもらった上、なんと肉までお裾分けまでゲット!…まあ、初めからこの流れを期待していたのだが。
本記事ではその味をレポートする。
アナグマは雑食性で、かわいい顔をしていながら作物を荒らすこともしばしば。この個体も獣害の深刻な畑のそばで獲られた。エサは熟れすぎた果物だったそうだ。
アナグマはイタチ科に属す雑食性の獣である。日本に生息するのはニホンアナグマ(Meles anakuma)で、北海道と南西諸島を除く各地に分布している。
イタチ科というと、スレンダーなイメージが強いがアナグマはかなりずんぐりむっくりした体型(短足なのはイタチと同じく)で、可愛らしい印象を受ける。
すさまじい量・厚さの脂身!
皮を剥ぐと、肉一面を分厚い脂が覆っている。
ここまで脂が乗るものなのか。
「かわいい!」が「うまそう!」に変わる瞬間だ。
切り分けてもなお強烈に主張してくる脂身。これを活かした料理に仕立てたい。
アナグマの肉。鮮やかで深い赤。
というわけで、まずはモモ肉でコンフィを作ることにした。脂身を炒めて溶かし、それに肉を浸した状態で60℃をキープ。低温でじっくりと火を通す。
脂身をフライパンで加熱する
黄金色の油が取れた
この油と下味をつけた身をジップロックに封入し、低温でじっくりと調理。
アナグマのコンフィ。独特な脂の甘みは牛や豚では楽しめない味。
タヌキのように臭みがあるのではと心配だったが、しっかり血抜きがなされていたためか、そういったクセはほとんど無い。
脂のやさしい甘みが口に広がる。なるほど、これは美味い。抜群だ。
こうした獣肉を食べ慣れていない人でも、抵抗無く楽しめる味である。
とはいえ、牛や豚では代えのきかない味であることはたしか。すべてはやはりこの良質な脂がキーとなっているのだろう。
一点気になるのは肉の固さ。市販の畜肉と比べるとかなり歯ごたえがある。
低温調理のコンフィならまだ気にならないのだが、焼肉やグリルで食べるとかなり顎が疲れる。素人の処理だからというのも理由の一つだろうが。
ではこの歯ごたえを考慮した上でもう一品、シチューを作ってみよう。
作り方は概ねビーフシチューに倣う。
ただ、煮込むほどに尋常でない量の脂が溶け出して浮いてくるので、まめに取り除く必要がある。
煮込むほどに、大量の油がどんどん浮いてくる。
めんどくさがって、あるいは甘い脂を惜しんでこの工程を怠ると、一皿食べきる前に非常にヘヴィーな胃もたれに見舞われることとなる。
アナグマの濃厚なうまみが溶け込んだシチューは、言うまでもなく絶品。
じっくり煮込まれ、程よく脂が落ちたアナグマ肉は口の中でホロホロと繊維に沿ってほぐれる。
まあ、柔らかさでは牛肉にはかなわないのだが、この歯ごたえもいわゆる「野趣」というやつなのだろう。
そもそも、アナグマはジビエの本場、フランスでは名の知れた食材である。
最近では東京にもアナグマ料理を供する店があるそうだ。
こうした事実もアナグマの美味さを裏付けるものだろう。
狩猟免許を持っている方や、これから取得しようと考えている方は、いつかアナグマを狙ってみてほしい。
ハンティングには無縁という方も、ジビエ料理店などのメニューにこの獣の名前を見かけたら、ぜひ試してみてほしいものだ。