ネコザメ釣獲へ!3年間の軌跡 前編(伊豆大島)
ネコザメ釣獲へ!3年間の軌跡 前編(伊豆大島)
ネコザメと聞くとサメ好きではない人でもピンと来る人が多いのではないか?サメらしからぬ独特な風貌、可愛らしい一面から水族館ではよく見られ、場所によってはタッチプールなどにも泳いでおり、ドチザメらと並んでサメ肌を親しめる種でもある。
英名はブルヘッドシャーク(牛の頭)の名の通り顔が著しく大きく、胸ヒレは手のひらサイズの大きさ。見た目はチョット、サメとはかけ離れているかも知れない。
私はこのサメが釣りたくて堪らなかった。え?釣れるの?と思った方が多いかも知れないが、ネコザメも普通に釣れる沿岸性のサメの1匹だ。
こんな堤防から普通に釣れる事のあるサメである。
そんなネコザメ。私自身、釣るのはそこまで難しい話ではない。と、思っていた。
そう思っていた2015年、それから後3年、この魚を追い続けていくなんて、知る由もなかった。
○ネコザメを狙え!in離島
ネコザメ自体、本土にもわんさかいるのだが、島には大型の個体が複数生息していると聞き、まずは伊豆七島の玄関口『伊豆大島』へ乗り込んだ!
季節は冬、12月〜3月の間、集中的に通った。ネコザメの産卵が最も栄えるのが3月〜4月なので、12月あたりから産卵を控えたモンスターが岸によってくるのだ。
宿もレンタカーも借りず、右も左もわからない私は、とりあえず主要港を中心にぶっ込み釣り、泳がせ釣りを開始。
しかし、釣れてくるのは、、、
巨大なウツボから小さいウツボまで。
際限なく釣れてくる。しかもこいつら仕掛けを歯で傷付け、終いには体にグルグルに巻いてしまい厄介極まりない。。。
伊豆七島(特に前半5島)にはかなりの量のウツボが生息しており、ぶっ込み泳がせ(特に岩礁帯、テトラ帯域)は、ほとんどがコヤツの餌食になる。
歯もかなりのモノ持ち。毒はないが、雑菌が多いので、噛まれたらかぶれることもある。取り扱いには要注意!!
最初の頃の私は、ウツボの量を全く把握できず、ぶっ込み餌を全て持っていかれるという事態が起き敢え無く敗退。
ならば餌を変えればどうか!
このサイズのムロアジが縦横無尽で泳ぎ回れば、動きが遅いウツボなら、捕食は難しいのではないか!!
答えはすぐに出た
、、、、やっぱね!!魚についている糸さえ体に絡めてしまえば、この程度のムロアジがいくら元気であろうとも関係なかった。大体がとぐろを巻いて上がってくる、、、。
こうなれば、ネコザメが付きやすい、回遊しやすいポイントを集中的にぶっ込むしかない、、、。いわゆる潮当たりの良い岩礁地帯がネコザメの好み。
しかし、ネコザメとウツボの生息域は被るので、やはり釣れてくるのはウツボ。
どうすりゃいんだああああ!
なかなか途方に暮れてしまい、大島は5回以上、狙い始めて1年が経過したが、依然ネコザメのネの字も、見えて来なかった。
○ネコザメがくれた新しい絆
そんな中でも、釣れないネコザメが私にくれたものはたくさんあった。
いつもの様に、ネコザメを狙いに大島へ行くと、なんと他にもネコザメを狙っている御一行に会う事も出来た。
また、他の凄腕な釣り師の方とも一緒にお話をして、遊んで貰えたり。
いつも1人で堤防の上で寒空の下、孤独に釣りをしてきた私にとって、とても喜ばしい事だった。
ネコザメが手繰って繋いでくれた最高の釣り人の絆。本命を探り当てるまでの旅のこういった出会いが、実は一番幸せだったりもする。
ちなみにこの時、私はついに島にまできてウツボ1匹も釣れない『島ボウズ』と、散々な結果であったが、夜が明けて、みんなで酒飲んでワイワイしてとても楽しかった。
『ネコザメ、、釣れなかったけどありがとう、、』
○翌冬リベンジ!出でよネコザメ!!
2017年、ネコザメを狙い始めて2年が経過していた。この冬もネコザメを狙うべく、伊豆大島へ向かっていた。
この時点で他に狙っている方々の殆どがネコザメを釣り上げていて、残るは私のみ。
今年こそは釣る!もはやネコザメを調べ尽くした私は自信に満ち溢れていた
初のジェット船での来島!なにより、速い!値段は高くなるが、社会人で時間がない人にとって、こんなに良い手段はない。
そして、ちょっとリッチな気分だ。
早々に餌調達!!今回は釣れる気しかしねえ!!釣り座も良い場所を取ることができ、完璧!
根拠のない自信を持ち、釣り開始。
しかし。。。。相変わらずのウツボの嵐
これを超えないと、目標の魚には会えないのだと奮い立ち、夜通し釣り続け、、、、
……ちーん、燃え尽きたぜ、真っ白にな。。
今回もネコザメは愚か、サメやエイにも会えずウツボパーティになった。
2015年から狙い始め、2018年5月までに大島は計11回通い、一度もネコザメと出会えなかった。
完全に肩を落とし、私はこの魚とはもう出会えないんじゃないかとさえ思った。
『少し距離を置こう。。。思い出した頃に、傷が癒えた頃にまた挑もう。。。』
そのままネコザメを狙うことはしばらく辞めた。もしかしたら、このまま時が忘れさせてくれてもう狙わないかも。。。なんて思ったり。
そのまま他の釣りを楽しみながら過ごして3ヶ月が経った。しかし頭の片隅にはあの魚への想いが消えず、モヤモヤしていた。
○邂逅、夏夜に咲いた、念願の小さく大きな夢花火
8月の猛暑が続き、各地で花火大会がおこなわれていた。地元でも花火大会が開催され、町は賑わっていた。そんな花火の音を聞きながら、なにか居ても立っても居られない気持ちになり、不意にネコザメの事が頭に浮かんだ。
『そういえば、、、』
この忘れ物は常に私の中から離れなかった。やはり諦め切る事は出来なかった。時が解決すると思っていたが、やはりこの魚に触りたい気持ちは忘れられない。
急遽、地元からはかなりの距離だが、とある場所に車を走らせた。ネコザメを先輩が目の前で釣り上げた場所。私にとっては大島の次にネコザメの因縁がある場所だ。
各地で花火の音が鳴り響く。
色々な会場の花火を見ながらのドライブ、少し贅沢だ。疲れを忘れさせてくれる。
長い時間をゆっくりゆっくりとクルマを走らさせ、夏の風物詩を楽しんだ。そして気付けば因縁に地に到着。
海の状況を確認し、すぐに海に餌を放る。周りではまだ花火が打ち上がっている。潮はそこまで動いておらず、ウツボの多そうな海だ。
答えはすぐにでた、この後もウツボラッシュが続いていく。ウツボラッシュ中、時間も遅くなり、花火はフィナーレを迎えていた。
豪快に連打する花火の音を聞いていた。こちらもウツボ花火を浴びながら。。。
そして、しばらくして一つの竿からいつもとは聞きなれない音が聞こえた気がした。
『ん?』
少し糸を張り、効くと魚はまだ餌を食っていた。
『ここは慎重に。。。』
いつもより少し送らせて、餌を充分魚に食い込ませしっかりフッキング!
軽い!!
ウツボより明らかに軽いし、暴れない。
慎重に慎重に、そして手前まで来てライトを照らす。
『あっ!!ネ、、、ネコザメ!!』
糸の先には長きにわたる夢が必死に抵抗していた。タモを用意し、ネコザメに向けて下ろす。そして遂にネコザメは網に入った。
フィナーレの特大花火が上がった。その頃堤防では私にとって最も大きく念願である夢が私の前に打ち上がった。サイズは見てきた中で最小、だが私にとっては何よりにも大きく見え、気付けば目からは涙が流れていた。
『ようやく。。はあ。。。よっしゃあ!!!!!』
まともな言葉は吐けず、ただ前に横たわるネコザメにありがとうを連呼するのみだった。
このサイズではまだ頭が小さく、英名〈ブルヘッド〉とは呼べないが、若いが故に体色は綺麗な縞柄、ヒレは淡いピンクで縁取られている。背ビレのトゲもまだ綺麗に残っていた。
顔もまだ可愛く、猫目がこちらを不思議そうな目で覗いていた。顔は体のラインと同じ。写真や今まで見てきたネコザメのような石頭感はなかったが、このサイズでも頭はかなり硬く、この子の未来がたのしみになった。
サザエなど貝類や甲殻類を噛み砕く事ができることから、別名『さざえわり』の名で通るネコザメだが、まだまだ大型の強靱な歯はなく、可愛らしい口。チャームポイントの豚鼻がより一層かわいくさせる。
消して今まで見てきた巨大なネコザメではない。私が手にしたのは今まで見てきた中で1番小さな子だった。
でもこの小さいネコザメに会うまでにいろんな経験と仲間を得て、成長した私が居た。
『求める物なんて、少し遠周りするくらいがちょうど良いね。。。。』
涙なのか油なのか。。。顔がテカテカや。こんな感動できるなんてやはり魚は素晴らしい
ネコザメが教えてくれたもの、それはこれから生きていく上で大切な仲間との絆や忍耐力、そして大事なのは、旅を過程を楽しむ事、諦めない事。
この1匹にはいろんなことを学んだ。
リリースしてからネコザメの背中を追いかけてありがとうありがとう、と言葉をかけた。
最高な気分で帰路に着いた。
そしてこのネコザメを見て、もう少し諦めずにやろうと思った。ネコザメを狙い始めた最初の目標、メーターオーバーを目指して。
そして2018年の12月。12回目の伊豆大島に突入する事になる。
目的はこの子ザメの親分を釣り上げる事。
夢の大花火はすぐそこ。
来たる2018年12月、海を渡り伊豆大島へ。12回目の決戦に臨むのだった。後編へ続く・・・。